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2025年に太陽フレアはピークを迎える!? 「宇宙天気」を知っていますか?【前編】

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宇宙天気に注意をしなければいけないと考えさせられる事例は他にもあります。2000年に発生した巨大フレアの影響によって、日本のX線天文衛星「あすか」が制御不能となりその運用が終了した事故がありました。
この原因は、太陽フレアの発生によって放たれる放射線量の増加や、カナダの大停電同様の磁気異常が発生したことで、地球の大気が膨張したことだと言われています。これによって人工衛星が地球のまわりを回っている時の空気抵抗が強くなり、軌道制御できなくなってしまい、そのミッションの終了を余儀なくされてしまったのです。

1993年2月に打ち上げられ、2001年3月まで運用された「あすか」 画像提供/JAXA
1993年2月に打ち上げられ、2001年3月まで運用された「あすか」 画像提供/JAXA

あすかは、当時日本が世界をリードしていたX線天文学の研究技術の集大成でもあり、その損失は非常に大きかったと考えられます。今、日本のX線天文学を代表する研究者たちはこの衛星で成果を残した世代が多いです。それだけでなく、1990年代後半から2000年台にかけて、海外から研究者が日本にX線天文学を学びにくる流れが大きく、ここで学んだ人たちが今、各国のメインミッションの責任者をつとめていたりします。このことからもわかるように、世界に対しても強い影響力を持っていた衛星の一つが「あすか」でした。

計画は途中で頓挫してしまいましたが、あすかが約8年間の観測の中で残した成果はやはり素晴らしく、2023年の今もその意志を継ぐミッションがJAXA主導で進められています。それが、この連載でも紹介した月面着陸実証機SLIMと一緒に宇宙に打ち上がった、X線天文衛星XRISMです。X線天文学の歴史やXRISMについては、これからの連載の中で紹介していこうと思いますので、楽しみにしていてください。

実はこの大気の膨張による人工衛星の被害は、SpaceXのStarlinkも受けています。2022年、Starlink衛星約40機が打ち上げ直後に制御不能となってしまいました。この時の太陽フレアはカナダの大停電や天文衛星の時に比べると小さかったものの、こういった事故はやはり発生してしまいました。今後人工衛星の打ち上げ数は格段に上がっていき、宇宙から私たちの生活が支えられる時代がくることを考えると、いっそう宇宙天気に注意を向けておく必要があると思えますね。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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