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日本初の月面着陸を目指す! 「SLIM」が宇宙開発の未来を変える!?

その状況の中でSLIMは「降りやすいところに降りる時代から、降りたいところへ降りる時代へ」をコンセプトに開発された、「小型月着陸実証機」です。SLIMには金属の緩衝材が搭載されていて、衝撃を吸収しながら、機体の体勢を変えて着陸する仕組みになっています。

実はこの金属の緩衝材は3Dプリンターで作られています。3Dプリンターが活用されているということ、そして衝撃吸収方法がミッションをユニークなものにしています。この技術によって、これまで着陸が難しかった場所にもアプローチするのです。

 SLIM の垂直降下シーケンスの解説図 画像提供/JAXA
SLIM の垂直降下シーケンスの解説図 画像提供/JAXA
2023年6月、種子島宇宙センターの衛星フェアリング組立棟(SFA)で撮影されたSLIM 写真提供/JAXA
2023年6月、種子島宇宙センターの衛星フェアリング組立棟(SFA)で撮影されたSLIM 写真提供/JAXA

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アポロ計画などこれまでの月面への着陸方法は、三脚のように足を広げて、着陸の衝撃を吸収する手法でした。しかしこれでは着陸に必要な部品も大型になり、着陸場所も足を広げて着陸できる平坦な場所に限られてしまいます。

アポロの着陸構造と比較してもSLIMは小型でどこでも任意の場所に着陸できるユニークさを持っていることがわかります。3Dプリンターは、現在ロケット開発などにも応用され、宇宙業界でも注目を集めている技術なので、その導入成果にも個人的には期待しています。

行きたい場所へは、“door to door”で行けたほうが地上でも月面でも便利なのは同じです。どこでも好きなところに着陸できることが実証されれば、これからの宇宙開発の幅が大きく広がるでしょう。
もしこのまま限られた場所にしか着陸できない場合、その場所を起点にした範囲でしか探索ができません。探査の幅が狭まり、本当の意味で月を知ることができなくなります。

天体観測では夜空が綺麗に見える場所にいくことが一番いいように、月でもその探査にとって最適な場所にいくことが重要です。着陸場所の選択肢が広がるSLIMに注目が集まるのも納得ですよね。

実際にSLIMは、月の特定の場所に着陸しないとできない科学ミッションも持っています。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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