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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

「人間は特別な生き物」は傲慢か真実か? 動物の専門家が考える「ヒトにしかない能力」とは

×文字を理解できるのは人間だけ

文字というのは、何かしらの情報を伝える記号です。
記号ではありませんが、同じように情報を伝えるものと考えると、たとえば、アリなどの昆虫類は化学物質を用いて間接的にコミュニケーションをとります。巣からエサの場所を示す「アリの道しるべフェロモン」などが有名です。

また、タヌキは、ためふんといって、複数のタヌキが同じ場所でウンコをします。どうやら、他のタヌキの情報をそのウンコのにおいで得ているようなのです。掲示板、あるいは名刺やチラシの置き場みたいな感じなのかもしれません。

チンパンジーは学習により文字や記号の意味を理解することができる。(イラスト/大渕希郷)
チンパンジーは学習により文字や記号の意味を理解することができる。(イラスト/大渕希郷)

さて、もっとすごいのはチンパンジーです。人間の言語を学んだチンパンジーがいます
私も出入りする機会があった京都大学の霊長類研究所が率いる研究チームのもとで、彼女は数字を理解し、アルファベットを理解し、人間や仲間のチンパンジーの名前をイニシャル1文字で表すこともできるようになりました。

学習によって、文字をある程度あつかえるヒト以外の動物もいるという事実は、私たち動物の専門家にとっても非常に驚くべきことでした。

×高い知能を持つ人間だけが道具を使える

パソコンのような精密機器を生み出し操る……なんてことは、さすがにヒト以外には不可能でしょう。でも、道具を作って使う動物は、けっこういるのです。

たとえば、チンパンジーなどは、木の枝をアリ塚に差し込んでアリを釣り上げて食べたり、2つの石をハンマーと台のように使って木の実を割って食べたりします。
石を使った木の実割りはオマキザルの仲間でも知られていますし、ラッコも石で貝を割ったりしますね。
あとは、カレドニアガラスなど鳥類でも、枝をカギ状に曲げたもの使って、穴の中にいる昆虫をほじくり出すものがいます。
天王寺動物園では、自分では届かない高いところにあるエサを木の棒(というより丸太)などを使って取るホッキョクグマが話題になったので、その姿を見たことがある人もいるかもしれません。

また、水辺の木を切り倒して、川にダムを作ることで有名なビーバーは、道具を作る・使うどころか、大規模な建設工事をやっているようなものです。

道具ではないですが、シャチは仲間と連携して波を起こし、巨大な氷塊を割って、その上にいる獲物のアザラシを落とす……なんてこともやってのけます。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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