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「人間は特別な生き物」は傲慢か真実か? 動物の専門家が考える「ヒトにしかない能力」とは

世界初の「どうぶつ科学コミュニケーター」として、講演活動やフィールドワーク、執筆活動など幅広く活動中の大渕希郷さん(通称・ぶっちー)。
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?  
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。

前回は、「しっぽ」の役割に着目しました。
今回は、動物としての「ヒト」について考えます。

「人間にしかできないこと」の多くが否定されている

「人間も動物の一種である」
これに異議を唱える人は少ないでしょう。

しかし、心のどこかで、
「とはいえ、やはり人間は他の動物とは違う特別な生き物だ
と感じている人が多いのではないでしょうか。

実は、生物科学の研究の進歩によって、これまで「人間しかできないだろう」と考えられてきた事柄の多くが否定されてきています。

その代表的なものを挙げてみましょう。

×社会性をもつのは人間だけ

「一昔前まで、『動物の世界に社会などあるわけがない』というのが科学界の常識というか、一般的な認識だったんだよ」
と、ある教授から聞いたことがあります。

しかし1950年ごろから、日本人研究者が中心となって、ニホンザルにはじまり、チンパンジーやゴリラなど、霊長類の世界にも種ごとに実に多様な社会構造があることがわかってきました。
たとえば、この連載でも紹介したボノボの社会では、メスは年功序列で順位が決まっています。そして、メス優位な社会を形成します。対して近縁種のチンパンジーではオスが腕力でものをいうオス優位社会で、他の集団に対しても攻撃をすることがあります。ボノボの場合は、威嚇はすれどもそこまでには至りません。
どちらが優れているという話ではないのですが、近縁種でもこれだけ社会構造が違います。

そういった、人間と近い霊長類たちと人間の社会を比較することで、われわれヒトの社会構造や進化についての理解も進みつつあります。

現在では霊長類だけでなく、イルカやクジラ、イヌ、アリなどなど、実に多種多様な生物がそれぞれ独自の社会を形成していることは常識になっています。

×人間しか言葉による音声コミュニケーションを取れない

シジュウカラという身近な小鳥は、異なる意味を持つ鳴き声を組み合わせて文章を作ることが知られています。
鳴き声、つまり単語を彼らの文法に従って組み合わせることで、初めて聞いた文章(鳴き声の組み合わせ)であったとしても、文意を理解できるそうです。

音声によってコミュニケーションをとる動物としては、多くの鳥類のほかに、霊長類、ワニ類、イルカ・クジラ類など実にさまざまな動物で知られています。
これから研究が進めば、シジュウカラ以外にも文法をあやつる動物が次々に見つかる! なんてこともあるかもしません。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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