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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

致死率ほぼ100%! イヌだけじゃない、ネコもヒトも感染する「狂犬病」感染の恐怖

狂犬病は全ての哺乳類が感染する!

じゃあ、用心して海外でも日本でも野良犬に近づかないようにすればいいよね?
うちが飼っているのはイヌじゃなくてネコだから関係ないよね?
なんて、思った方もいるかもしれません。

声を大にして言いたいのですが、狂犬病はイヌ以外の動物も感染します!!

そのネーミングのせいで、イヌ特有の病気のように勘違いしている人が多いのですが、それは間違い。
実際には、ネコやコウモリ、そして人間など、すべての哺乳類が感染する病気です。

厚労省によれば、アジア・アフリカではイヌやネコ、アメリカ・ヨーロッパではキツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、ネコ、イヌ、中南米ではイヌ、コウモリ、ネコ、マングースが主な感染源として知られています。

では、なぜ狂“犬”病と言うのでしょうか?

まず、動物が発症すると、狂躁状態となり、目の前にあるものすべてに咬みつくようになります。そして、日本においては主な感染源がイヌであったために「狂犬病」と名付けられたようです。
ちなみに、英語ではrabies。ラテン語の「狂気」が由来で、dogは入っていません。
なお、人が発症すると水を恐れるようになるために「恐水病」とも呼ばれます。

イヌ以外にも感染の可能性があるにもかかわらず、日本ではイヌだけに狂犬病ワクチン接種が義務付けられているわけですが、その理由を、厚労省は下記のように説明しています。

「狂犬病は全ての哺乳類に感染しますが、特にアジアなどの流行地域での主なまん延の原因は犬です。世界中で狂犬病に感染する人の9割以上が犬から感染していることを見ても、人への被害を予防するために、犬の狂犬病をコントロールすることは有効です。日本でも万が一狂犬病が侵入した場合に備えた国内対策として、(1)飼い犬の登録と(2)飼い犬への狂犬病予防注射、(3)放浪犬の抑留を実施しています。」(厚労省のwebサイトより)

要するにイヌが主な感染源なので……ということのようです。

先述の通り、狂犬病予防法の成果もあり、日本では過去65年はイヌの感染例が確認されていません。
ただし、それはあくまでも正式な検査で見つかっていないだけ。
そして繰り返しになりますが、イヌ以外にも感染の可能性はあります
近所の野良猫や軒先に棲み着いたコウモリが狂犬病を持っているウイルスを絶対に持っていないとは言えません。

これは狂犬病以外の感染症についても同じことです。
ヒトは哺乳類の一種ですから、特に、同じ哺乳類、あるいは同じく恒温動物である鳥類から感染するものはたくさんあります

人獣共通感染症(ズーノーシス)は様々ある。動物由来感染症とも言う。(イラスト/大渕希郷)
人獣共通感染症(ズーノーシス)は様々ある。動物由来感染症とも言う。(イラスト/大渕希郷)
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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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