2021.3.14
キリンは鼻クソがほじれない? 動物番組の監修者が驚いた“残念”なガセネタ
動物を見つめる“残念”な視点
ここ数年、メディアでは生き物を“残念”という視点で見る企画が人気です。
今回紹介したガセネタも、動物の生態を残念がって面白がるような風潮から生まれたもののように感じます。
もちろん、昨今のメディア倫理はしっかりしていて、だからこそスタッフさんたちは私はじめ専門家らに確認を取っています。
大切なことは、まず科学的に正しい情報を伝えること。そして、たとえ科学的に正しくても、演出や編集等で誤解が生まれないか? あるいは専門家にわかってもお茶の間の一般の方々にどう受け取られるか? まで監修することです。
それが、専門家と非専門家をつなぐ科学コミュニケーターとしての私の仕事だと考えています。
私は、残念という視点で見ること自体は良いとも悪いとも思っていません。
むしろ、きっかけは何であれ、生き物の生態に関心を持ったり、生き物や自然から創作活動のインスピレーションを受けたりする人が増えるのは喜ばしいことだと思っています。生物学的にはありえなくとも、生き物を擬人化した素晴らしい作品だってたくさんありますし。
ただ、懸念しているのは、動物に対して上から目線になってしまうこと。
特に子どもは純粋ですから、メディアが発信する表現や扱いをそのまま鵜呑みにしがちです。
先日Twitterで目にした知人の言葉は胸に刺さりました。
「昨今の流行のせいで、子どもが生き物たちの営みを小バカにしたようなことを言う。それがやるせない」という主旨のものです。
これはその通りだと思います。
生き物の生態を「残念」「切ない」と、人間の価値観や情動的な視点で楽しむのは大いにけっこうですが、本当に大切なのはその先。
興味を持ったものに対しては
「ほんまやろか?」
「これってどうなってこうなってんの?」
「その切なく見える生態には、実は他のメリットやわけもあるんやない?」
と、考えを進めていくことで、世界を正しく見る目が養われていくはずです。
誤解を恐れずに言えば、勉強は知識あるものから習うものですが、科学は疑うことからはじまります。
●参考文献
ロビン・ベーカー編(2003年 普及版)「図説 生物の行動百科」朝倉書店