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大渕希郷「動物ふしぎ観察記」

ペットのイグアナを動物園に放置!? 元・飼育展示員が語る「動物園で絶対にやめてほしいこと」

動物園は飼育が最終目的の施設ではない

声を大にして言いたいのですが、「動物園に動物を無断で放置するのは、とんでもなく大迷惑な行為です!!」

そもそも、哺乳類、鳥類、爬虫類のペットを遺棄することは犯罪です。動物愛護管理法によって、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

「殺してしまうよりマシではないか」「行き場がないのはかわいそうだから一緒に飼ってあげればいいのに」と思う人もいるかもしれません。
でも、動物園のスタッフからすると、来歴のわからない動物を不意に持ち込まれるのは、動物を殺すのと同じような行為なのです。

上野動物園・両生爬虫類館の飼育展示スタッフ時代の筆者。(写真/大渕希郷)
上野動物園・両生爬虫類館の飼育展示スタッフ時代の筆者。(写真/大渕希郷)

そもそも動物園の役割は4つあり、「種の保存」、「教育・環境教育」、「調査・研究」、「レクリエーション」。この役割をまっとうするため、綿密な展示計画が立てられ、実行されています。そのために飼育技術の向上は重要ですが、飼育そのものが最終目的の施設ではないのです。

突然、来歴のわからない生き物が持ち込まれることは、この計画が大きく崩れることを意味します。

まず何よりも怖いのが病気です。一見しただけでは、その動物がどんなウィルスや寄生虫などの感染症を持っているかわかりません。
例えば、人間にはうつらなくても、実は同種同士ではうつってしまう病気をその個体が持っている可能性も十分にありえます。

ですから、計画外の動物が持ち込まれた際には、検疫とよばれる専門的な隔離検査を実施します。検査方法や基準は動物種によります。
もし既存の個体とすでに接触していた場合は、そちらの検査も必要です。
そこには人員と時間が割かれ、その費用は公営であればみなさんの税金から支払われています

そもそも人員数が十分とは言い難い園が多いのが実情。みなさん、限られた時間の中で飼育展示ルーティンをこなしたうえで、種の保存はじめ前述した4つの業務もこなさないといけないわけです。また、物理的な問題として、動物の飼育スペースだって限られています。
無限にどんな動物でも受け入れられるわけがありません。

つまり、予定外の動物が持ち込まれることは、動物の命が危機にさらされ、本来の目的にかけられるはずだった人手やお金(税金)、時間、飼育スペースが削られてしまうことになるわけです。それは動物愛護管理法の対象外となる両生類や昆虫類を含む、すべての生き物にいえることです。
その「罪の大きさ」についてみなさんにも是非じっくりと考えていただきたいと思います。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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