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動物園のBL事件簿! ブチハイエナのメスに立派な“ペニス”があった!?

なぜペニスもどきがあるのか?

そもそもなぜ、ブチハイエナのメスにはオスのような立派な突起物があるのでしょうか?
そしてなぜ命の危険を冒してまで、それを通して出産するようになったのでしょうか?

結論から言うと、明確な理由はまだ明らかになっていません。

一説には、ブチハイエナの社会構造が関係していると言われています。
ブチハイエナは、メスの方が身体が大きく、群れを守るのもメスの仕事。要はメス優位な社会を形成します
いざというとき闘うのもメス。攻撃性も兼ねそろえた性格や体格の特徴は、胎児期に男性ホルモンをたくさん浴びることで形成されてゆくことが分かっています。
その影響で、メスの生殖器の外見もオス化してしまうという説です。

なお、交尾においてもメスは圧倒的に優位です。
交尾の際、メスは擬陰茎を引っ込めることで一時的な女性器、ヴァギナをつくります。
したがって、メスがオスを気に入らなければ交尾はどうしたって始められません。
加えて、擬陰茎の元の位置や角度によって、このヴァギナの開口部は前向きになります。
いわゆる後背位で後ろからオスがのしかかり挿入しようとしても、うまくやらねばメスは離れていってしまいます。
このように交尾をする・しない、交尾がうまくいく・いかないは、完全にメスの気持ち次第なわけです。

ところが、2018年にはブチハイエナに関する新たな論文によって、実際にはメス優位性は血縁者に支えられているだけなのではないか? という報告も出ました。
オスとメスが1対1で闘った場合、実はどちらが勝つかは半々だというのです。

ブチハイエナの場合、群れで生まれたオスはやがて流れ者になり、別の群れに合流します。メスは成長しても生まれた群れに留まります。
ですから、群れにいる大人のオスはよそ者ばかりです。
群れでもめ事が起きたとき、血縁者がたくさんいるメスたちの方が優勢になっているだけなのではないか、ということです。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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