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【W新刊記念対談】武田砂鉄×堀井美香 あなたの「普通」と私の「普通」が違う場所で語り合うこと

ライターの武田砂鉄さんが、父ではない立場から、子育てや家族について考えた『父ではありませんが 第三者として考える』。フリーアナウンサーの堀井美香さんが、27年間勤めたTBSを退社し、フリーとなった経緯を綴った『一旦、退社。50歳からの独立日記』。どちらも発売から即重版となった話題作です。
TBSラジオでの共演などで親交のあるお二人が、お互いの新刊刊行を記念し、3月9日に青山ブックセンターでトークイベントを行いました。
天衣無縫な堀井さんの応答に、武田さんが冷静に切り込む、息の合ったやりとりが繰り広げられたイベントの一部を、ダイジェストでお届けします。

(構成/よみタイ編集部 撮影/長谷川健太郎)

とこしえに70歳

武田砂鉄(以降、武田) 堀井さんとお会いするの、結構、久しぶりですね。下北沢B&Bでの高瀬隼子さんとのトークショーを配信で見てくださったそうで。

堀井美香(以降、堀井) 配信チケットを買いまして。ちょうどあれ、19時ぐらいからだったじゃないですか。最初、イベントが始まってじゃれ合っているようなところを拝見して、こんな感じなんだな~と思って、途中まで観て仕事に行ったんですけど。

武田 全て観なくても、何となく調子つかめたかな、っていうことですか。

堀井 そう。で、今日最後まで観ておこうと思って残りを観たら、がっつり話してる。

武田 意外とちゃんと真剣な話を。

堀井 まずいと思って……。

武田 今日、どういうつもりで来たんですか。

堀井 山田うどんの話。

武田 山田うどんの話? フランクな話で終わろうとしてますか、もしかして。

堀井 そうです。

武田 直接お会いするのは去年の6月以来と僕は記憶してます。覚えてますか、あのときのことは。

堀井 お寿司屋さんに行ったときですよね。ジェーン・スーと3人でカウンターに。

武田 3人で行ったというか、スーさんと堀井さんが二人で行こうとしているときにたまたま鉢合わせになって、強制的に連れて行かれたという言い方が正しいですけどね。堀井さんがちょうどフリーになりたてで、入金が8000円しかなかったって話をしていたのを覚えてます。「OVER THE SUN」でも話してましたけど。

堀井 8000円だったかな、お金ないっていう話をしましたね。

その落ち着いた声から、ラジオリスナーの眠気を誘ってしまうことも多々あるという武田砂鉄さん
その落ち着いた声から、ラジオリスナーの眠気を誘ってしまうことも多々あるという武田砂鉄さん

武田 その前、僕がやってるラジオ番組にゲストで一度お越しいただいたこともあります。いろんなところで話してますが、僕と会うまで、堀井さんは僕のことを70歳ぐらいだと思っていたという話があります。姜尚中さんと同じぐらいの年齢だと思っていたと。

堀井 でも、70歳のままですよ。

武田 会っても70のままですか。

堀井 今、実年齢は幾つですか。

武田 40歳ですよ。

堀井 40歳なの? びっくり。

武田 ひとつ上が荻上チキさん、ひとつ下が神田伯山さんです。

堀井 本当に? 40歳なの?

武田 そうですよ。チキと伯山に挟まれています。

堀井 とこしえに70歳って感じ。

武田 とこしえに70歳。言葉遣いはきれいだけど、失礼な話ですね。

堀井 でも、考えてみて。

武田 考えてみましょう。考えますよ。考えましょうよ。

堀井 30年後に70歳になるんでしょ、本当は。でも、70から70のままじゃない。

武田 70 to 70ってこと?

堀井 私は50だから80になっちゃうんだもん。でも、あなたはずっと70のままだから。

武田 このままでいいと。70 to 70、このまま維持。

堀井 ずっと70なんじゃないですか。なんか落ち着き、声もそうですけど、激しい動きをしたりとかしないんですかね。

武田 激しい動き?

堀井 バーゲンとか行かないですか。

武田 バーゲン行かないですね。

堀井 呼吸がずっと小康状態ですよね。

武田 小康状態。いや、「死亡」のやつですよね、モニターの線が上下に動かないやつ。ピーーー、おい、大丈夫か?っていう。

堀井 一番、大声出したりとか、オーバーアクションになったときってこれまでで何ですか。

武田 いや、これがないんです。ずっと昔からそうなんです。勢い任せに怒ったこともないですし、突然、大声を上げることもないですし。

堀井 運動部でいらしたんですよね。

武田 バレー部同士ですからね。

堀井 バレー部だったんですか。

武田 高校バレー部キャプテンです。堀井さんは中学バレー部ですもんね。この本に書いていましたね。中学バレー部で、レシーブもアタックもあまりしないようにしていたという。そんなバレー部あります?

堀井 背も伸ばさないようにしてました。

武田 背を伸ばさないようにするために、バレー部でアタックもレシーブもできるだけ控える。なんですかそれ。

堀井 重心低く、下に下には得意でしたけど、上にはあんまりいかないようにしてました。

武田 嫌ですね、そんな部員。

堀井 バレー部のとき、声は出すでしょ?

武田 嫌でしたね。合わなかったですね。週末に社会人の先輩が来て、とにかく「声を出せ」って強いてくるじゃないですか。そういうのを露骨に嫌がっていたので、上の代から嫌われていました。だから、OB会も僕らの代だけ呼ばれていないみたいなんです。

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新刊紹介

堀井美香

ほりい・みか
1972年、秋田県出身。アナウンサーとしてTBSに27年間勤めたあと、2022年3月に退社しフリーランスに。現在は、TBSテレビ「坂上&指原のつぶれない店」、「バナナサンド」などの人気番組や、数々のCMなどでナレーションを担当。自身が開催する朗読会も、チケットが即完売するほど人気となっている。
著書に『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、共著に『OVER THE SUN公式互助会本』(左右社)などがある。

武田砂鉄

たけだ・さてつ
1982年生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。2015年『紋切型社会』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。他の著書に『日本の気配』『わかりやすさの罪』『偉い人ほどすぐ逃げる』『マチズモを削り取れ』『べつに怒ってない』『今日拾った言葉たち』などがある。週刊誌、文芸誌、ファッション誌、ウェブメディアなど、さまざまな媒体で連載を執筆するほか、近年はラジオパーソナリティとしても活動の幅を広げている。

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