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発売即重版御礼! 新刊『昼間のスターゲイザー』 鏡リュウジさんによる「あとがき」全文公開 

 ですが、同時に僕は気が付いています。僕が感じているこの「寂しさ」というセンチメンタルな感情は、危険な兆候でもあると。
 東畑さんの話にも出てきますが、「わかり合えた」という気持ちは、相手の理想化であったり、何かの投影や転移であることが多いものです。それが反転したときには憎悪にもなりかねない。
 これも東畑さんが「まえがき」で仰っていることだけれど、占いと心理学は遠い親戚ではあるけれど、互いに他者でもある。親戚であるということは近しくわかり合える場合も多いけれど、その分、剣吞な関係になることもままある。親戚同士の楽しい饗宴が、一転して、険悪な場になることも実際によくあることでしょう。小さな違いが大きな亀裂や裏切られたという失望と怒りを生む。
 冷静に考えれば、近代的なパラダイムの上で成立する心理学と非近代的なパラダイムを生きる占いの軌道は、接近しつつもすれ違い、互いに何度も失望することを宿命付けられているようにも思います。たとえその基層に「心」という共通基盤があったとしても、です。

 これは心理学と占いについてだけの話ではないでしょう。もっと広く、東畑さんがしばしば言われる「専門職セクター」と「民俗セクター」の接地面で起こる共感と反感の葛藤の問題でもある。こんなにも忙しい東畑さんがわざわざ僕との対話にエネルギーを割いてくださったのは、この饗宴が個人的な友情や興味の範疇を超えて、援助職や心のケアをめぐる、より普遍的でアクチュアルな問題に開かれていると考えておられるからでしょう。

 それは僕自身の関心で言えば、危うさをはらんだ「スピリチュアル」な世界といかに健やかに関わっていくことができるかを再考する機会でもありました。
 僕が「すごく楽しかったからまたすぐ次にね」と簡単に言えず、こんな寂しさを感じるのはこのためです。惰性ではなく、本当の意味でこの本の「続き」を作るためには、来きたるべき失望とすれちがいを受け入れなければならない。その上でさらなる対話ができるように、僕自身を鍛え直しておく必要があることを突き付けられていると感じるのです。このことを意識しながら、寂しくてもここで一度しっかりと「戸締まり」をしておこうと思います。
 ここでちゃんと戸締まりをしておけば、きっとそう遠すぎない未来に、もっと深く、もっと楽しい対話ができるはずですから。意識と無意識のあわいの薄明のなかで。
「戸締まり」をしながら、ここで感謝を。

 まずは何よりご一緒くださった東畑開人さん。全体の構成を作ってくださった上に終始、会話をリードしてくださり、僕の中の未だ言語化できていない心のうちを引き出してくださいました。文字通り最初から最後まで、東畑さんのお力でこの企画は進んでいきました。またライティングを引き受けてくださった小沼理さん。ときに散らかる話を巧みに整理してくださり、話題にのぼった資料をチェックしていただくお手数をかけた上で、見事な文章に仕上げてくださいました。小沼さんの繊細かつ正確な理解力あってこそ僕たちの対話はテキストになりました。
 さらに……本書を手にしてくださった、友なる昼間のスターゲイザーたちにも深く深く感謝申し上げます。

    二〇二六年土星と海王星が牡羊座0度で重なる年に。

本編は好評発売中の 書籍にてお楽しみください。

1980円(税込)/集英社
1980円(税込)/集英社

●心理学と占いに共通するもの
●昼間の星を見ようとすること
●人生には占いの時間も流れている
●占いの分類と夢を見ることの意味
●弱い宿命論と勇気の占星術
●象徴に対する信頼
●救世主か、詐欺師か? ……など

古代の肝臓占いから占星術、ユングや夢分析について縦横無尽に語りつくす!

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新刊紹介

東畑開人

臨床心理士・公認心理師。白金高輪カウンセリングルーム主宰。『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』(文春文庫)、『心はどこへ消えた?』(文春文庫)、『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』(KADOKAWA)など著書多数。『居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書』(医学書院)は第19回大佛次郎論壇賞を、『カウンセリングとは何か 変化するということ』 (講談社現代新書)は新書大賞2026を受賞。

鏡リュウジ

占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。著書に『占いはなぜ当たるのですか』(説話社)、『タロットの秘密』(講談社現代新書)、『タロットの美術史』(創元社)、『占星術の文化誌』、『鏡リュウジの占星術の教科書 I ~Ⅵ』(ともに原書房)、訳書に『魂のコード』(朝日新聞出版)、監訳に『世界史と西洋占星術』(柏書房)、『タロットと占術カードの世界』(原書房)など。占星術研究の第一人者として幅広く活動中。

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