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ホストクラブと女風はどう違う? 似て非なる二つの世界 【対談】菅野久美子×槙島蒼司

相手が「沼った」のか、自分が「沼らせ」たのか

菅野 お話を伺っていると、やっぱりかなり広範囲な女性のケアを受け持っていらっしゃるように感じるんですけど、結構ヘビーなお仕事ですよね。ホストもそうですけど、女性側がものすごく入れあげてしまう、いわゆる「沼問題」って、この業界にはつきものの悩みですよね。

槙島 僕の場合は顔出しして活動しているので、ある程度自衛はしないといけないですけど、僕とお客様の間で「沼」っていうのは存在しないと思って生きてるんで。

菅野 ええっ! そうなんですか。沼は存在しないとは?(笑)

槙島 「沼」にも2種類あって、お客様が勝手に「沼って」いくのか、こちら側が意図的に「沼らせた」のか。この場合、たいてい問題になるのって、こちらが「沼らせた」場合なんです。お客様が勝手に「沼って」しまった場合、往々にして決してこちらには伝えてこないですね。だから問題になりようがないんです。
こちらが沼らせた場合、「責任取ってよ」という話になる。圧倒的にこのパターンが多いですね。だから僕の場合、「沼らせる」可能性のある受け答えは絶対にしません。

菅野 具体的に挙げると例えば、どういうやり取りですか。

槙島 例えば、本当に熱々のカップルが言うようなセリフで「愛してるよ」とか。疑似恋愛だとしても、やっぱり疑似を超えちゃう言葉っていうのはあるので、そこを逸脱しないようにはしてます。言葉って武器にもなるので。

菅野 やはり、言葉の一つ一つに、すごく気を使われていらっしゃるんですね。それでも、会いたい会いたいという女性側の欲求が強くなって一方的に「沼って」しまうお客さんもいらっしゃると思うんです。例えば予約を入れ過ぎてるなというお客さんがいたら、槙島さんはどう対応されるんでしょう。

槙島 過剰に会おうとしてこられる方には、やっぱりある程度の段階で自分の態度で、好意はないってことを示しておきますね。あと、売れている状況を作る。時間があるから相手をしてしまって、結果のめり込めてしまう隙が生まれるので、自分がまず売れる(笑)。常に忙しくて、次の予約まで1ヶ月以上待たないといけないという状況を作ってあげれば、沼ろうにも、沼りようがないですから。

菅野 めちゃくちゃ売れっ子になると(笑)。そのご回答は、全く想定してなかったです。斜め上過ぎて、びっくりしました。確かにおっしゃる通り、忙しくて会えないならそれは本当に仕方ないですもんね。沼りようがないですよ(笑)。

槙島 もちろん沼らせたほうが、収入的な面では一時的には安定するんでしょうけど、費用対効果っていうのをちゃんと考えなきゃいけない。僕たちは基本、時給が発生するビジネスモデルでやっているので、一人のためにプライベートの時間まで費やすんだったら、SNSの発信を充実させたほうがいいわけです。そのお客様にしか視野が向いてないと、新しく入ってくる人はいなくなってしまう。仮に暇なんだとしても、忙しいよっていう演出をする必要もあります。人気商売ですから。

2時間に及ぶ濃密な対談の全貌はぜひ電子書籍にて! 対談時のアザーカットも収録しています。
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新刊紹介

菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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