よみタイ

ホストクラブと女風はどう違う? 似て非なる二つの世界 【対談】菅野久美子×槙島蒼司

優秀なセラピストを見分けるポイント

菅野 女風のセラピストって、すぐに辞めてしまう方も多いですよね。もちろん、辞めるのは色々な理由があると思うのですが、続く方とすぐ辞めちゃう方って見たらわかりますか。

槙島 わかります。しゃべっててすぐわかりますね。

菅野 どういう人が続けられるんでしょう?

槙島 目的があるかないかだと思います。この仕事でどうなりたいか、何を得たいかが一番重要で、例えば、お金を稼ぎたい、だとする。じゃあ、今まで稼ぐ努力をしたかっていうのを聞くんですけど、その努力の内容ですよね。自分は何ができるからお金を稼げると思うのか。こういうことを学べばお金が稼げる、これまでこういう努力をしてきたっていう、ちゃんとストーリーがある人って続くんですよね。
あと、続かない人の特徴として、話に集中力がないんですよ。まず会話のキャッチボールができない。よく面接とかでもあると思うんですけど、「あなたの好きな食べ物は何ですか?」って質問を受けたときに「いや、僕、実は~」って始める人は絶対、続かないです。「焼き肉です。なぜならこうだから」って単刀直入に答えられない人ってダメですね。

菅野 「実は」って言う人、多いですね。ダメな話し方なんだ(笑)。

槙島さんも、前職は営業職。セラピストにもその経験が応用できるという。
槙島さんも、前職は営業職。セラピストにもその経験が応用できるという。

槙島 女性って、「この人大丈夫かな?」って疑問を抱いたときに、質問をするんですよね。この質問に対して、「え?」ってなってしまう人は絶対的外れな回答をしてしまう。きついことを言われたときにも、「なんでこんなことを言われなきゃいけないの?」っていう反応が一番にくる人は定着しない。言われたことに対して、受け止めて理由を考えられる人は強い。

菅野 なるほど。それって企業でも同じで、優秀な社員とか、営業マンの条件とすごく似ているような感じがします。顧客のニーズを受けとめて、それに対して瞬間的に的確な返し、下手すれば、相手が求めている以上のレスポンスができる、という。

槙島 その通りなんです。女風のセラピストって、ほとんどが副業なんですよ。うちで働いている子たちも副業が多いんですけど、その月が終わったときの振り返りとして、今月のやれたこと、やれなかったこと、新規・既存の集客の割合、よかった点と反省点、売り上げのリストをちゃんと作ります。今月はここがダメだったから、来月はこうしてみようっていう考えを持ってる子が多いんですけど、大体サラリーマンですよ。

菅野 確かに、昼間は会社員をやっている男性も多いですよね。

槙島 結局、そういう振り返りがちゃんとできるのって、本業でも優秀なサラリーマンなんですよ。続けられる、結果を残すのはそういう子ですね。

菅野 なんか残酷な真実。会社では冴えない彼が実は……っていうのはないんだ(笑)。

槙島 中身のない子のところには、やっぱり「誰でもいいや」っていうお客様が来るんですよ。誰でもいいやと思ってるから、こいつでもいいや、で選ぶ。当然、そこでリピートは発生しない。だから続けられない。定着するかどうかの根幹はそこじゃないですか。さっき営業マンと仰ってましたけど、全く同じですよね。誰からでも買うわけじゃない、この会社のこの人が来たから買うっていうところだと思うんですよ。
われわれのお店は、ある程度の知名度っていうのは確立できたと思ってるんですね。greedから来る人なら大丈夫って信頼して呼んでくださるっていう前置きができてるので、僕らもそこを保証しなきゃいけないから、厳しく見てます。

1 2 3 4

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

新刊紹介

菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

週間ランキング 今読まれているホットな記事