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ホストクラブと女風はどう違う? 似て非なる二つの世界 【対談】菅野久美子×槙島蒼司

ノンフィクション作家の菅野久美子さんのよみタイでの連載が、電子書籍『私たちは癒されたい 「女風」に通う女たち』として配信開始されました。
本書の巻末に収録した、女性用風俗店「greed」代表兼現役セラピストである槙島蒼司さんとの対談の一部を特別公開します。

前編では、女性たちの利用動機、セラピストに必要な能力について伺いました。
後編では、ホストクラブと女風の違い、優秀なセラピストを見分けるポイントなどについて伺います。

(構成/よみタイ編集部 撮影/中川英樹)

ホストクラブと女風の違い

菅野久美子(以降、菅野) 槙島さんはホストクラブと女風の違いってどう考えていますか。

槙島蒼司まきしまそうじ(以降、槙島) 性的なサービスがあるかないかはもちろんありますけど、それ以前に本質的なところが結構違うと思います。以前、ある有名なホストの方と対談させていただいたことがあって。その時に感じたのが、ホストってある程度、わがままじゃないといけない。わがままが売りなんですね。

菅野 わがままとは、例えば、どんな感じでしょうか。

槙島 すごくわかりやすく言うと、「俺はすごいから俺を応援しろ」なんですよ。そういう人のほうが需要が高い。癒されたいっていうよりは、わがままなアイドルを応援して輝かせるっていう形ですよね。だから女風とは対極なんですよ。

菅野 あぁ、なるほど。確かに、それを考えたらかなり両者は対極ですね。

槙島 そのホストクラブのお客様をどうやって女風が獲得するかっていうと、ホストとの関係にちょっと疲れてる人が、話し相手として僕らのところに来る。

菅野 すごく面白いですね、生態系が(笑)。

槙島 よく「競合するんですか?」っていう質問をいただくんですけど、全く競合はしないんですよ。ホストの方たちの稼ぎ方と僕らの稼ぎ方って全然、違うので。会話する内容、一緒にいる時間、接し方の質が全く異なります。

菅野 そうですか。ホストは基本、お店の成績が全てですよね。

槙島 ホストクラブはお店単位での接客というか、団体行動っていうのが主流ですけど、僕らは基本1対1、単独行動が主流なので。
ホストクラブって、お店というオープンフィールドにいる人を応援して、周りがはやし立てて、そこで競争が始まってっていうビジネスモデル。自分が指名しているホストを輝かせるために、どこまでできるか、何ができるか。当然、お客さんもプレイヤーです。でも、そこにずっといたら疲れるので、ちょっと一回、話を聞いてほしい。本来、誰にも言えない話を、密室で誰かに聞いてほしい。で、そこにいるのが、僕たち。1対1で、話を聞いてって言っている女性に、わがままを言っても仕方ないですよね(笑)。

槙島蒼司 まきしま・そうじ  女性用風俗店greed代表。東京都出身。営業職を経て、セラピストの道へ。趣味は仕事。
槙島蒼司 まきしま・そうじ  女性用風俗店greed代表。東京都出身。営業職を経て、セラピストの道へ。趣味は仕事。

菅野 ホストクラブに通うお客さんが女風も利用してるっていうケースはありますか。

槙島 当然あります。最近は増えてきましたね。水商売とか、風俗で働いている方の割合が半分くらいかな。

菅野 他に、ホストとセラピストの決定的な違いがあれば、教えてください。

槙島 この仕事をしている男性って、基本、「奉仕型」っていうイメージなんですよ。ホストは、「俺を輝かせてくれ」じゃないですか。ここが決定的な違いですね。
「あなたのために」っていう思いが、僕らって強いんですよ。基本、一人に対してとことん向き合うことが全ての仕事なので。そこで自分が輝くかどうかっていうのは、二次的なものですよね。

菅野 なるほど。女風は「奉仕型」という言葉はすごくわかりやすくて、的確な表現ですね。それでも槙島さんなら、ホストでも、すごく人気が出そうですけど。

槙島 お客様に連れられて、ホストクラブに行くこともあるんですよ。でも、僕らとはやっぱり売り方が違うんで、ちょっとできないなと思います。

菅野 逆に言えば、ホストの方はセラピストはできないって言うかもしれないですね。

槙島 実際に言われました。だから、どっちもやってみるって人、多いですよ。でも結局どっちかなんですよ。奉仕ができるか、はたまたわがままができるかという。結構、はっきり分かれますね。

菅野 そういった意味では、利用する女性側のニーズも、ホストとセラピストでは、全く違うんでしょうね。確かに女風は、ケア要素が強く求められる気がするんですよ。

槙島 お客様も働く側も、どちらが自分にフィットするかというのはありますよね。女風のセラピストは、基本は風俗なので、いわゆる性感の流れは一通り提供できないといけないんですけど、そこも結局は、相手を気持ちよくしてあげたい、この人のために上手になりたいっていうのが強いんですよね。こういう気持ちがあるかないかだと思います。

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新刊紹介

菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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