2021.7.19
祖母に禁じられた遊び
祖母の姉と、彼女たちの母親である曾祖母。その二人もまた、「籠をかぶって、ぐるぐる回っていた」らしいのです。
でもそれは遊びではなく、一種の占いとして、人に頼まれてやっていた仕事だったそうです。曾祖母はぐるぐる回るうちに、籠の編み目から未来が見通せたのだとか……。まだ少女だった祖母の姉も、その手伝いをしていました。
でも、彼女はある時、占いの途中で亡くなってしまったのです。
死因はわかりません。とにかく突然、泡を吹いて心臓が止まったということです。
それを境に、集落内では、うちの家についての悪い噂がたてられていきました。
だから曾祖母や祖母は住んでいた土地を出ていかざるをえなくなった。今の実家はその時、親戚筋を頼って引っ越したところなのだ……と。
そんな話を家族から聞かされ、さすがに私もぐるぐる遊びを控えるようになったのです。
でも、今となっては不可解なところもあります。
祖母の言う通り、私は誰にその遊びを教えてもらったのでしょう?
本当に、自分一人で考えついた行為だったのでしょうか?
遠い記憶をたどっていくと……。
あの頃、実家の裏で、よく遊んでくれた女の子がいたような気がするのです。
顔も服装もおぼろげですが、私より少し年上のお姉さん。
しかし、うちの近所に、そんな子はいません。小さい町なので、同世代の子は顔も名前も全員はっきり知っています。
その見知らぬ子が、私にぐるぐる遊びを教えたような気がするのです。
なぜなら私の頭には、ある映像が鮮明に残っているからです。
籠をかぶり、両腕をぴんとはって、回転する女の子。それを近くで見ているイメージ。
一人で遊んでいたなら、そんな光景が記憶に残っているはずがありません。
私は大学からずっと、東京で暮らしています。
上京してからというもの、あまり実家に帰省していません。
もし家の裏手で、ぐるぐる遊びをする少女を見かけたらと思うと、怖ろしくてならないからです。
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