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夜道を歩く女性の二人組が向かう先

夜道を歩く女性の二人組が向かう先

 すぐ手前まで近づいたところで、二人の足元がくっきり見えた。
 ワンピースの裾からすらりと出た、細くきれいな足。そのどれもが、靴をはいていない。黒いアスファルトの上で、四つの裸足が白くきらめいている。
 ギョッとしつつも、そのまま二人を追い抜いてしまう。
 すぐに彼女らの顔を見ようと振り向く。
 ところが背後には誰もいない。ただ、薄暗い夜道が続いているだけ。
(え?)
 慌てて進行方向に顔を戻す。そこでまた驚いた。
 百メートルほど先に、あの二人組が歩いているではないか。
 やはり細長い影を二つ、足元からこちらに伸ばしながら、ゆっくり前へ進んでいる。
 
 混乱しながら自転車を走らせた。
 今度はすぐに追いついてやろうと、全力でペダルを踏み込む。
 そのとたん、彼女たちは道路沿いの一軒家に入りこんでいった。
 こちらも急いでそこに近づき、門の向こう側を確認する。
 しかしそこには、人が入った気配がまったく感じられなかった。玄関先の常夜灯も玄関内の電気も点いていない。家はどこまでも、しんと寝静まっている。
 
 どうにも気になったので、翌日、また例の家の前を通ってみた。
 するとその門の両脇には、黒白の鯨幕が張られていた。
 こっそり玄関先を覗くと「忌中」の文字が下がっている。
 誰がいつ、なぜ死んだのか。
 それがわかってしまうと、とてつもなく怖ろしいことになる気がして、急いでその場から逃げ出した。

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7月の『日めくり怪談』特集一覧
7月2日 夜道を歩く女性の二人組が向かう先
7月4日 設置されては撤去されるブランコの秘密
7月6日 クラスメイトの机に置かれた手紙
7月9日 誰も来ないはずの男子トイレで目にしたもの
7月13日 息子に見えている母の顔
7月15日 内線電話から聞こえてくる声
7月19日 祖母に禁じられた遊び
7月22日 僕にだけ聞こえてくる音
7月27日 この子は大人になる前に死ぬから
7月30日 隙間から入り込もうとするもの
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新刊紹介

吉田悠軌

よしだ・ゆうき
1980年東京都出身。怪談、オカルト研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。オカルトスポット探訪マガジン『怪処』編集長。実話怪談の取材および収集調査をライフワークとし、執筆活動やメディア出演を行う。
『怪談現場 東京23区』『怪談現場 東海道中』『一行怪談』『禁足地巡礼』『日めくり怪談』『一生忘れない怖い話の語り方 すぐ話せる「実話怪談」入門』『現代怪談考』『新宿怪談』『中央線怪談』など著書多数。

Xアカウント @yoshidakaityou

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