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人生後半の豊かさを求めて…『女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住』発売記念! 藤原綾さんインタビュー

効率を求めることが本当にいいことなのかは分からない

――逆に、住んでみて意外に大変だと感じたことや苦労はありますか?

驚いたことと言えば、男女の役割分担に関してかなり保守的だという点です。
男性の仕事と女性の仕事がハッキリ分かれていて、私が力仕事をしようとすると「そんなことは女の人はしなくていい」と驚かれたり。家の中で会合をすると、男性と女性の席がパッと分かれて、台所に立つのは女性たち。仕事も女性は補助的な役割が多いと聞いています。
私がどうこうできる問題ではないですが、この地域の重要課題である高齢化がさらに進んで、外から若い世代を受け入れていこうとするときの障壁になるかもしれないとは感じています。
あと、不便というか非効率を感じるのは日常茶飯事です(笑)。例えば、自治会長の選挙では、集会所に行って鉛筆と投票用紙を配られて投票する慣習があるのですが、「これ、アプリでピッと押せば済む話だよね……」とつい思っちゃったり。
でも、よく考えてみたら、効率を求めることが本当にいいことなのか分かりませんよね。効率を求めた結果、形のない大切なものがいつの間にか削ぎ落とされていったのが、今の東京の姿だと思いますし、私はそこから離れたいと思ったのですから。
「いつの間にか失ってしまったものを取り戻すために私はここに来た。だからじっくり腰を据えて勉強するぞ」という気持ちでいます。

本の中では、土地や家探しのあれこれについても詳細レポ。写真は、生活感の残る中古の一軒家を購入し、こだわりのリフォームをした様子。
本の中では、土地や家探しのあれこれについても詳細レポ。写真は、生活感の残る中古の一軒家を購入し、こだわりのリフォームをした様子。

――これから地方移住を考えている方へアドバイスをお願いします。

やっぱり、謙虚に馴染む努力をすることは大事かなと思います。長い年月をかけて育まれたつながりのある地域にお邪魔させてもらっている立場なのだから、地域の一員として求められる役割はしっかり引き受けるべきだと思います。都会にはない地域のつながりは、裏を返せば「しがらみ」や「煩わしさ」にもなりますが、いいとこどりはできないという覚悟は必要ですよね。それを受け入れることで、地域との交流も生まれるはずですし、自分の変化を楽しめるといいと思います。
私が事前にやればよかったと後から気づいたのは、役所をもっと上手に頼ること。移住者に対する助成や支援を用意している自治体も多く、親身になって対応してくれる職員の方も都会より多い印象があるので、気になる地域があればコンタクトを取ってみるのがおすすめです。地域を選ぶ際には、災害対策としてハザードマップの確認もお忘れなく。
連載を始めてから、同世代の女性から「実は私も気になっていて」と相談の連絡が何件もあったんです。久しぶりに連絡をくれた友人もいて。共通していたのは、私が感じていたのと同じ「人生後半に向けての不安」でした。
長生きすると言われる時代に、これから先の人生を満たしていくにはどうしたらいいのか、みんな悩んでいるんですよね。私も悩んで、悩んだ結果、移住という方法をとりましたが、他にもいろいろな選択肢があるのだと思います。
どの道を選ぶにせよ、自分にとっての「豊かさ」をブレずに持ち続けること。それが、どこにいても幸せを感じて生きる法則のような気がしています。

2/3発売! 移住体験実録エッセイ

1,650円(10%税込)
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バツイチ、子なし、ひとり暮らしの中年女性が人生後半戦を見つめ直し、生まれ育ち40数年暮らした東京を離れ鹿児島県霧島へ。戸建て物件探し、引越し、リフォーム、ご近所付き合い、畑仕事、仕事先の東京との往復……オンタイムで綴る移住ルポ。

藤原綾さんの『女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住』は、Amazonほか、全国書店・ネット書店にてお求めいただけます。

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新刊紹介

藤原綾

ふじわら・あや
1978年東京生まれ。編集者・ライター。
早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社を経て宝島社に転職。ファッション誌の編集から2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙と幅広い分野で編集・執筆活動を行う。
インスタグラム @id_aya 
ツイッター @ayafujiwara6868
プロフィール写真©chihiro.

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