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人生後半の豊かさを求めて…『女フリーランス・バツイチ・子なし 42歳からのシングル移住』発売記念! 藤原綾さんインタビュー

人生の「豊かさ」のレベルが上がった

――仕事のために東京と行き来するのも大変だと思いますが、率直に、移住してよかったですか?

正直言って……、本当によかった!と思っています。
東京で暮らしていた時よりも、確実に私の人生の「豊かさ」のレベルは上がったと感じています。
豊かさの基準は人によって違って、それが「お金」という人もいるかもしれませんが、私の場合はやっぱり「心地よい生活」だったんだなとあらためて実感しているところです。
東京ではなかった近所付き合いが、ここでは当たり前の日常。ゴミ当番の腕章を持って行くついでにおまんじゅうをお裾分けをしたら、お返しに梨をいただいたり。畑を持っている方も多く、新鮮な野菜もたくさんいただくので食生活も健康的になりました。つい先日も、道の途中で車が脱輪して困っているおじさんがいたので助けを呼んだら、翌日「昨日はありがとね」ってお寿司を持ってきてくださいました。東京では消えてきた地域の助け合いを味わっています。
町内会や婦人会の活動も「来れる時だけでいいんだよ」と気を遣ってもらっていますが、できるだけ参加するようにしています。

――地域に馴染む努力をされているんですね。

努力というか、「郷に入れば郷に従え」の精神が大事だと思っています。その地域のコミュニティにこちらから入れていただく身なので、積極的に馴染む。私はこの地域を変えたいなんて一切思っていなくて、温泉に恵まれた霧島市の地域に惚れて、「よかったら混ぜていただけませんか」という気持ちで移住を決めたので。
本当は髪も染めたくてウズウズしているんですけど(笑)、5年くらいは我慢して自分の中で「地域に馴染もうキャンペーン」を続けるつもりです。5年って東京のスピード感だとずいぶん長く感じるかもしれませんが、地方では「小学生の頃から幼馴染の長い付き合い」とかが当たり前なので、時間のものさしの単位が長いんだと思います。
この時間感覚に慣れてきてから、東京のスピードが不自然に感じるようになりました。ものすごい速さで消費されて、数カ月単位で新しいお店ができては消えていく。利益至上主義ではそうなるのは仕方がないけれど、それが果たして本当に大切なことなのか、見つめ直すきっかけになりました。

ファッション誌の仕事も数多く担当してきた藤原さん。今はおしゃれより地域に馴染むことが優先。
ファッション誌の仕事も数多く担当してきた藤原さん。今はおしゃれより地域に馴染むことが優先。

――お金のやりくりについてはいかがでしょう。

食費と住居費は確実に下がりました。地方は都会と比べて収入が下がると言われますが、コストも下がるので、収支バランスはそれほど変わらないのではないかと思います。
変わったのはお金の使い道ですね。シーズンごとに服を買い替えるような、なんとなく「自分をよく見せるため」に散財していたことに気づきました。今は、自炊のための食材を中心に「豊かに生きるため」の支出が中心です。温泉を求めての旅費が減ったのも大きいですね。

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新刊紹介

藤原綾

ふじわら・あや
1978年東京生まれ。編集者・ライター。
早稲田大学政治経済学部卒業後、某大手生命保険会社を経て宝島社に転職。ファッション誌の編集から2007年に独立し、ファッション、美容、ライフスタイル、アウトドア、文芸、ノンフィクション、写真集、機関紙と幅広い分野で編集・執筆活動を行う。
インスタグラム @id_aya 
ツイッター @ayafujiwara6868
プロフィール写真©chihiro.

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