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元めちゃモテ女〜ぷっくり唇がここに来て大火傷を負ってる話
8月5日に、鈴木涼美さんの新刊『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図を読まない』が発売されました。
「よみタイ」でも大好評だった連載コラム、「○○○な女 オンナはそれを我慢している」「×××な男 酒と泪とオトコと美学」から厳選された30人の男女の話が1冊に!
令和を生き抜く現代男女の生態を、いまや各メディアで引っ張りだこの涼美さんが独(毒?)自の視点で分析します。

この刊行を記念し、本書の中から著者みずからが「特に思い入れが深い!」と厳選した各篇を、その理由と書籍未収録の画像(涼美さん自撮り!)とともに特別掲載。
毎週1篇ずつ、全6回の特別企画です!

元めちゃモテ女〜ぷっくり唇がここに来て大火傷を負ってる話

無敵類ハッテン目ガラパゴス科
【元めちゃモテ女】
分類詳細:パステル属過去モテ種
生息環境:令和の今もひっそり点在
特徴:どうせ若い子がいいんでしょ

@鈴木涼美
CanCam全盛期に女子大生だった私の世代は、軽やかで器用でストレスフリーな若い時代を過ごした者も多いけど、そのリバウンドのアラフォーが窒息気味なのかも?

 めちゃモテとは05〜07年頃、発行部数が80万部超えまで伸び、女性誌で一人勝ちしまくりの全盛期だったCanCamが、看板モデルだったエビちゃんこと蛯原友里をアイコンに打ち出していたコピーで、当時の女子大をパステル系カラーに染め上げた戦犯でもある。

 ふわっと揺れるスカート、上品だけど若々しいツインニットなど、誰でもそこそこ似合って誰にでもそこそこウケがいい服をマルイなどで廉価で購入する、というのが当時の無責任であんまり趣味と頭の良くない若い女子の基本動作となり、アプワイザー・リッシェなどの簡単に他の色に染め変えられそうな淡い色のアイテムが是とされた。

 当時まだ神戸女学院大で教鞭をとっていらした内田樹先生は著作の中で、CanCamの打ち出した「めちゃモテ」(つまりそれまで女子大生の象徴的な雑誌だったJJのファッション戦略「本命男性にとことん愛されること」に対して、「万人からちょっとずつ愛される」という戦略)はいかにも日本人の本態的メンタリティに親和する、とご指摘なさっていた。例えば憲法9条は「みなさんにぜぇーったい危害は加えません♡うふ」という意思表示になっているのではないか、そしてそれはまさに国際関係におけるめちゃモテぷっくり唇なのではないか、と。

 憲法9条の外交上の利点についてここで詳しく語るつもりはないけど、つまりそんな、深く長く愛し愛されるような辛抱強さや人間的な大きさなんかより、無害で軽薄なめちゃモテぷっくり唇が、男のハートを都合よく掴みたいと考えた当時の女子のハートを強く掴んだのでした。

 重たい雑誌が提案したそんな軽やかで人の好みに合わせて何色にもなれそうな女の子たちは、たしかに男子たちのハートを上手く揺さぶり、先生に可愛がられ、サークルで大事にされ、会社で喜ばれ、多くはその中でそれなりの条件の男に軽やかに嫁いで行った。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中にキャバクラ嬢として働くなど多彩な経験ののち、卒業後は2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、世相に関するエッセイやコラムを多数執筆。
近著に『女がそんなことで喜ぶと思うなよ 愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』など
公式Twitter @Suzumixxx

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