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「TOEIC満点でも本当の英語はしゃべれない」と言われるのはなぜか? 英語ネイティブが不自然な英語に極めて不寛容な理由【大野和基『懐に入る英語』試し読み】

懐に入るために「雑談」と「ユーモア」が重要となる

英語を母語とする人物がビジネスの交渉相手である場合、雑談(small talk)によって相手との距離を縮めることができる。日本人は英語での雑談が苦手と言われるが、それはちょっとした日ごろの心構えと習慣でできるようになる。相手をリラックスさせるには、雑談が有効であるが、さらにユーモアは相手の本音を聞き出すのに役立つ。取材では初めて会う人が圧倒的に多いので、最初に相手の警戒を解き、リラックスさせることが重要である。これは当然ビジネスの場合にも当てはまるだろう。警戒されていると、なかなか胸襟を開いてくれず、事が前に進まない。リラックスさせることで相手が饒舌になるので、思わぬビジネスチャンスがその場で生まれるかもしれない。

ユーモアも日本人の感覚とアメリカ人の感覚は異なる。英語で言うとみんな笑うが、日本語で同じことを言うとユーモアにならないことも多々ある。アメリカ人の友人たちに、日本人と英語で話すと壁を感じると言われたことがあるが、その壁はユーモアで崩せることが多い。以前、ロサンゼルスの上空で、一定の高度に達した機内でアメリカ人パイロットが、“This is a non-smoking flight. If you want to smoke, just step outside.” (これは禁煙のフライトです。タバコを吸いたい場合は、一歩外に出てください)と放送したことがあった。機内は爆笑に包まれた。しかし、もしこれを日本の上空を飛んでいるときに日本人パイロットが放送すれば、乗客はどう思うだろうか。中にはこのパイロットは頭がおかしくなったのではないかと思う人がいるかもしれない。

日本語なら誰もが認める教養人であるのに、英語になると雑談ができないために教養がないと思われることが多い。それでは損をする。『新版 外国語学習に成功する人、しない人』(白井恭弘/岩波書店)にこういうくだりがある。

<さて、その国のことばができないと知性まで疑われる、というのは、残念ながら実際にあることです。たしかに、日本人でも、外国人とあまり接したことのない人は、外国人が片言の日本語で話しているのを聞くと、頭が悪いのではないか、という印象をもつこともあるようです。知り合いの外国人が、スーパーなどで頑張って日本語を話すとバカにされるのに、英語に切り替えると急に待遇がよくなる、などと言っていましたが、これもそのせいかもしれません。>

「懐に入る英語」のために必要なこととは?(写真AC)
「懐に入る英語」のために必要なこととは?(写真AC)

英語ネイティブは10歳で1万単語の語彙がある

TOEICや英検のような試験でいくら満点をとっても、実際の生の早口の英語が聴きとれなかったり、失礼な表現を使って怒りを買ったり、挙句の果てに縁を切られたりすることもある。親子関係なら話は別だが、大人同士になると「あなたが今使った表現は、ぶっきらぼうで下品である」とは教えてくれない。私自身留学のため渡米する前年の1978年、何の準備もなく腕試しに英検1級を受けたが、一次試験も二次試験も1回目で合格した。正直、手ごたえはなかった。

それまで英語でインタビューする経験はまったくなく、世間で言う“純ジャパ”だった。ただ英語の小説は膨大な量をすでに読んでおり、英語には毎日何時間も接していた。でも当時今やっているような世界の知識人へのインタビューをせよと言われていたら、できなかっただろう。

英語ネイティブは10歳で1万単語の語彙があると言われるが、英語のネックは語彙がすこぶる多いことである。しかも社会的地位と語彙の量は比例するので、大人でも常に語彙を増やす努力をしている人が結構いる。日本人だから語彙が少なくてもいいということにはならない。では、どうしたら 表現語彙=自在に使える語彙(active vocabulary)を増やすことができるのか、具体的に私がやっている方法も詳細に記したい。

相手の懐に入る方法が自然にできるようになると、ビジネスシーンでもきっと役立つはずである。駐在員や特派員は3、4年と短期間ではあるが、その間に人脈を作ると人生が変わることもある。実際、駐在が終わって日本への帰国命令が出たとき、自分で作った人脈を使って会社を辞め、現地のアメリカの会社に入って活躍している人を何人も知っている。
人脈作りの方法は、英語圏のみならず、日本にいてもいろいろなシーンで役立つと思う。実際に使った英文やどうやって説得したかも含めて、惜しみなく披露したい。

1978年に英検1級に合格した証拠。(写真:著者提供)
1978年に英検1級に合格した証拠。(写真:著者提供)

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4月24日発売!

ポール・クルーグマン、カタリン・カリコ、カズオ・イシグロ、ダロン・アセモグルなどノーベ
ル賞受賞者の取材は約20名。その他、イアン・ブレマー、マーカス・デュ・ソートイ、ジム・ロジャーズ、ユヴァル・ノア・ハラリら、「世界の超一流知識人・ビジネスパーソン」を、40年以上“英語”で取材し続け、彼らから絶大なる信頼を得る国際ジャーナリストである著者が、そのキャリアで培った「相手の心をつかんで離さない」(=「懐に入る」)英語の上達術を大公開! 「知の巨人」たちが会話やメールでよく使う英単語やフレーズ例なども多数紹介、楽しく読みながら使える最新の英語が学べる一冊。

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新刊紹介

大野和基

おおの・かずもと/国際ジャーナリスト。

1955年生まれ、兵庫県西宮市出身。大阪府立北野高校卒。
東京外国語大英米学科卒業後、1979年に渡米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。
​以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、世界的な要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。芸能ゴシップから国際政治経済モノまで、すべてを等距離に置くことをモットーとする。
3カ月で10万部のベストセラー『コロナ後の世界』(ジャレド・ダイアモンドほか、文春新書)、『民主主義の危機』(イアン・ブレマーほか、朝日新書)などの訳書、『つながりすぎた世界の先に』(マルクス・ガブリエル)、『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(ジム・ロジャーズ、ともにPHP新書)、『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』 (NHK出版新書)などインタビュー・編著多数。
著書に『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、『日本人だけが知らない世界基準の「質問力」』 (祥伝社)などがある。
公式HP■https://www.kaz-ohno.com/

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