2020.8.25
部屋のど真ん中でテントを広げて、たためないまま暮らした4日間
短パンを買おうと思った。それを穿いてどこへ行こうというのでもなく、せいぜい近所を散策するぐらいだけど、新しい短パンを買ったら気分が少しは上向きそうだと思ったのだ。
色は鮮やかな青がいい。古着で構わない。
そう思って「メルカリ」で探してみると、キリがないほど色々な種類のものが売りに出ている。その中から5つぐらいまで絞り込み、添えられた説明文や画像を何度となく見比べ、夕方から深夜までかけて最終候補を決定。念のため一度睡眠を挟んで気持ちを落ち着かせた上で判断することにして、翌朝ようやく購入ボタンを押した。
私の欲しい青い短パンは……これでもいいけど、これじゃない!
それから数日後に届いた実物は、しぶとく検討を重ねただけあって形もサイズもイメージ通りだ。
しかし、肝心の色味が思った感じと違う。自分が欲しかった鮮やかな青ではなく、ちょっと暗めの紺に近い青なのだ。
いや、悪くはないんだけど……ちょっと違うんだよなぁ。
考えてみれば、品物の写真は出品者がそれぞれの環境で撮ってアップしているわけだから、色味の判断はすごく難しいのだ。明るい場所で撮ったものと暗い部屋で撮ったものでは同じ色でも違うように映るだろうし、そもそものカメラの性能や設定によっても変わってくるだろう。もちろん、私がその画像をパソコンで見るかスマホで見るかなどによっても微妙に違ってくるはず。
そもそも、一口に青といったって群青色と空色では別の色だ。もちろん、判断ミスは私のせいであり、出品者にはなんの罪もない。仕方ないことだ。
とりあえずその短パンを穿きながら、結局私はまた「メルカリ」のアプリを立ち上げている。候補に残したうちの別の方を買えばよかったんじゃないかと、そんな後悔がいつまでも頭を離れなくて、「やっぱりこっちだったわ!」ともう一つ購入した。
しかし、驚いたことに、新たに購入したものも、開封してみれば最初に買ったのとほぼ同じ色。裾がちょっと長いだけだった。鏡の前で二つを穿き比べて、うなだれる。
この二つの短パンを使えば、超ハイレベルな間違い探しクイズが出題できそうである。
こうなると不思議なもので意地でも後に引けなくなってきて、「今度こそ!」の勢いで3つ目を購入。ようやく当初欲しかったイメージに近い鮮やかな青の短パンを手に入れたのだが、なんだか釈然としない。
「お気に入りの短パンを穿いて過ごす夏」にしたかったのに「同じ青い短パンをたくさん買った夏」になってしまっている。こんなはずじゃなかった……。