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ブンゴウ泣きたい夜しかない。~文豪たちのなんだかおかしい人生劇場
「文豪」というと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
いつも気難しそうな顔をしてて、メガネかけてヒゲなんか生やしてて、伊豆あたりの温泉旅館の一室で吸い殻山盛りの灰皿を脇目に、難しい小説なんか書いてる…。そんなイメージを持たれがちな彼らですが、実は現代人とたいして変わらないような、実に人間臭い面もたくさんあるのです。

今回ご紹介するのは、羨むほどの詩才に恵まれながらもその感受性の豊かさゆえか、愛弟子へのつのる恋心を思い切りこじらせた、斎藤茂吉の想いの成れの果てをお届けします!

【文豪と溺愛】愛弟子との道ならぬ恋に溺れすぎて~斎藤茂吉の不倫相手への凄まじいほどの女体礼賛

斎藤茂吉の不倫相手への凄まじいほどの女体礼賛

斎藤茂吉(さいとう・もきち)
1882年5月14日- 1953年2月25日

伊藤左千夫門下で、大正から昭和前期にかけてアララギの中心人物として活躍し、近代短歌を確立した歌人。精神科医としては青山脳病院の院長を務め、文学関係者では永井荷風や芥川龍之介、宇野浩二なども診察を受けた。

代表作『赤光』(1913年)

ふさ子への想いが募りすぎて恋文にぶつけまくる茂吉

短歌結社誌『アララギ』の中心人物として活躍した歌人であり、同時に精神科医でもあった斎藤茂吉。

幼少期、神童といわれるまで学業に優れていた斎藤茂吉でしたが、家は経済的に余裕がなく、進学の為に東京で開業医をしていた斎藤紀一の養子候補として上京することになります。その後、斎藤紀一の長女の輝子と結婚し、斎藤家の婿養子となるのですが、この輝子という女性は裕福な家庭に育ち、学習院に通い、女性誌で紹介されるような、今でいうならいわゆるセレブ。性格も勝ち気で男勝り。農家で育ち質素倹約な生活を好む茂吉と派手好きな輝子はあまり気が合わなかったようです。

そこに1933年に「ダンスホール事件」という事件が起こります。
この事件は、あるダンス教師が上流階級の婦人たちを相手に不倫関係を結び、お金を貢がせていた事件で、当時の新聞などで大きく報じられたのですが、その中になんと輝子の名前もあったのです。

この事件には茂吉も大変ショックだったようで「精神的負傷」と記しています。この事件をきっかけに二人は別居することになり、茂吉はふさぎ込んでしまいます。
そこで出会ったのが永井ふさ子という女性でした。

ふさ子は「アララギ」に入会したばかりの24歳で、才能あふれる美しい女性。つまり茂吉とふさ子は師弟の関係でしたが、茂吉はふさ子に恋してしまいます。
ちなみに茂吉先生、当時54歳! 

ふさ子もまた尊敬する茂吉に恋心を抱き、二人は男女の関係になるのですが、そんな茂吉がふさ子に送った、感情をぶつけまくっているどストレートな手紙が多数残っています。

斎藤茂吉が永井ふさ子に宛てた手紙は150通にものぼったとか
斎藤茂吉が永井ふさ子に宛てた手紙は150通にものぼったとか

「ふさ子さん!ふさ子さんはなぜこんなにいい女体なのですか。何ともいへない、いい女体なのですか。どうか大切にして、無理してはいけないと思います。玉を大切にするやうにしたいのです。ふさ子さん。なぜそんなにいいのですか。」

「あなたの写真を出して、目に吸ひ込むやうにして見てゐます(中略)この中には乳ぶさ、それからその下の方にもその下の方にも、透き通って見えます(中略)食ひつきたい!」

「銀座などでどんなひとにあひましても体に変化は起こらないのに、お手紙の一行でも読んでゐるうちに体に変化が起こつてまゐります。」

「ふさ子さんの海水着の写真が出来たら御送りください」

茂吉先生! 一旦落ち着こう!
ふさ子さんのことが大好きなのはわかりますが、やたらと女体ばかり褒めるのはどうかと思いますよ!
しかし茂吉先生の溢れんばかりの恋心は止まりません。

「実際たましひはぬけてしまひます。ああ恋しくてもう駄目です」

「今頃ふさ子さんはねていらつしゃるか、あのかほを布団のなかに半分かくして、目をつぶつて、かすかな息をたててなどとおもふと、恋しくて恋しくて、飛んででも行きたいやうです。ああ恋しいひと、にくらしい人」

女学生か? 女学生が書いているのか? いいえ、50半ばの男がその半分も歳のいかない相手に送っているのです。

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進士素丸

しんじ・すまる●1976年2月生まれ。ライター・文筆家。「文豪どうかしてる逸話集」(KADOKAWA)著者。文豪や歴史にまつわるツイートも話題に。
雑誌・ウェブ媒体などに寄稿しつつ、映像制作やデザインなども手掛ける。

Twitter●@shinjisumaru

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