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推しの卒業式で涙を堪えた柴田勝家──秋葉原の中心で〈永遠〉を考える

秋葉原の永遠

 ──もし生まれ変わって、また巡り会えるなら、その時もきっとアタシを見つけ出して。

 とは『ダイアモンドクレバス』の歌詞の一節だ。とはいえ、見つけ出したのはワシ個人などではなく、事情通の秋葉原のオタクたちだった。

「あ、翔ちゃん」

 戦国メイド喫茶を卒業した後、きゃりんちゃんは一年ほどアイドル活動をしていた。ワシは当然のようにアイドル現場に通って彼女のことを応援していた。さらにアイドルグループが解散した後、彼女は秋葉原の有名メイド喫茶へ転職を果たし、かなりな人気メイドとなった。

「や、久しゅう」

「ほんとだよー、全然来てないじゃん。あ、そだ、あのエッセイ読んだよ! すごいね!」

 で、つい先日もワシは彼女のいるメイド喫茶に足を運んだ。

「あんな昔のことよく覚えてるね? 記憶力いいよね。てか、いつだっけ、七年前?」

「いやまぁ、はは」

 何年経っても変わらず、彼女は明るく話しかけてくれる。

「ヤバ、お互いに年とったね~。こわっ! あ、ちょっと行ってくるね!」

 初めて会った時と同じように、今も彼女は周囲を見回して忙しなく動いていた。その姿を見られるだけで嬉しかった。

 どうやら、秋葉原の永遠は未だに続いているらしい。

 次回から第2部がスタート! 連載第13回は5/12(木)公開予定です。

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柴田勝家

しばた・かついえ
1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。著書に『クロニスタ 戦争人類学者』、『ヒト夜の永い夢』、『アメリカン・ブッダ』など。

Twitter @qattuie

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