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柴田勝家が敬意を表する、全てのメイドたちの「パパ」とは?

マツコ・デラックスが驚愕し、神田伯山を絶句させた、異形のSF作家・柴田勝家。武将と同姓同名のペンネームを持つ彼は、編集者との打ち合わせを秋葉原で行うメイドカフェ愛好家でした。2010年代に世界で最もメイドカフェを愛した作家が放つ、渾身のアキハバラ合戦記。 前回は、戦国メイドカフェの常連になったスイス人留学生のお話でした。 今回登場するのは、メイド全員の「パパ」を自称する男です!
イラスト/ノビル
イラスト/ノビル

「お疲れさま、パパの大事な娘!」

 戦国メイド喫茶に通うようになって、いくらかの月日が流れた。

 ワシはメイド喫茶での振る舞いにも慣れ、周囲のお客さんを観察しながら自分なりの推し方をしようと意気込んでいた。そうなれば情報収集も必要で、メイドさんたちが書いていたブログをチェックし、Twitterのアカウントを確認するようになっていく。特にTwitterはメイドさんごとに割り振られており、日々の呟きをしたり料理やお菓子の写真を上げたり、またお客さんたちとの交流にも使われている。この辺は給料が発生しないから、完全にメイドさんの善意というか、プロモーションの役割が大きい。小説家も自分の本を宣伝しないといけないから同じだ。ゆるさねぇ。

 そんな中、Twitterでメイドさんへのリプを見ていると、ある常連さんのアカウントがよく目についた。

「お疲れさま、パパの大事な娘!三回目のお給仕。無事にできたかな?」

 そんな言葉が、ほぼ全員のメイドさんに送られていた。今で言う「おじさん構文」で、絵文字なども交えてある。凄いのは在籍している大半のメイドさんを相手に、一人ひとり丁寧にリプを送っていること。そして彼女たち全てを自分の娘として扱っていることだ。

「ヤバい人だ!」

 と、最初は思っていた。正直に告白する。

 その人は「パパ」と名乗っていて、戦国メイド喫茶では今川みとらさんというメイドさんを推していた。彼女は名前の通り、今川義元の娘で、おっとりしたお姉さん系のメイドさんだ。一方、容姿はちょっとギャルっぽいので良い感じにギャップがあって可愛い。

 話は少し脱線してしまったが、ワシはこの「パパ」という人物がどんな人物なのか気になっていた。パパのTwitterプロフィールにはメイドさんの名前が書かれており、それぞれに(長女)(次女)といった風に続柄がある。なお推しのみとらさんには(嫁)とあった。オタクだから「俺の嫁」みたいな言葉は知ってるが、それが家系図になっているのは初めてだ。よく見ると十八女くらいまでいて、さらに愛犬(人間)と愛猫(人間)もいた。まさに大家族である。徳川家康は実子が十六人いたというから、やはり大将軍レベルなのは間違いない。

 で、メイドさんたちは、このパパをどう思っているのか。ワシはそれを確かめたいと思っていた。

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柴田勝家

しばた・かついえ
1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。著書に『クロニスタ 戦争人類学者』、『ヒト夜の永い夢』、『アメリカン・ブッダ』など。

Twitter @qattuie

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