2022.2.24
戦国メイド喫茶に現れた青い目のサムライ
遅れてやってきた青春
その後、ルカはワシらとよく遊ぶようになった。半年か1年、それくらいの時間を一緒に過ごした。戦国メイド喫茶で出会えば、そのまま夕飯を共にする。それが遅れてやってきた青春のように思えた。場所は秋葉原で、歳も離れていて、国籍も違うが。
「ルカ! おぶれ!」
ある日の帰り、秋葉原のUDXのそばでたくみんがルカに飛びついた。ルカは笑いながら、それを物ともせず、甲斐甲斐しく背負って歩いていた。
「ほう、凄いな、力持ちだな」
「軍隊にいたからね」
「ああ、スイスだから。国民皆兵というやつか」
たくみんを背負いながらワシの横を歩くルカは、優しげな男に見えるが、なかなかどうして屈強な男である。
「向こうだと、少し偉かったよ。階級、日本語だと知らないけど」
そう伝えられ、なんだか気になったのでスマホで調べる。スイス軍の階級は少しわかりづらかったが、どうやら少尉くらいの立場らしかった。
「部下は200人いるよ」
「ヤバいじゃん、たくみん、ルカに逆らうなよ」
「うるせぇ! 負けねぇ!」
そう言って、たくみんはルカの背中をバンバン叩いていた。
「ルカ! 六ヵ国語話せるからって調子乗んなよ! オレは日本語が喋れるんだぞ! アキバだとオレの方が偉ぇ!」
「はは、わかったよ」
ルカは笑って許してくれる、なんとも心の広い男だ。ルカの背中でたくみんはわめきつつ、ワシらは夜の秋葉原を歩いていく。この光景だって青春の一ページに見える。
しかし、別れの時は迫っていたのだ。