よみタイ

戦国メイド喫茶に現れた青い目のサムライ

ルカの強烈なジョーク

 ルカの留学が終わり、スイスへ帰る日が迫っていた。

「えぇ、ルカ、帰っちゃうの~?」

 そう言うりかりんの声は悲しそうで、他のメイドさんたちもルカの帰国を惜しんでいるようだった。ルカは振る舞いも紳士で、メイドさんたちからの人気も高い。

「うむ、これでスイスにもメイド喫茶あればな」

「そうだね、いつか作りたいね」

「じゃあ、私もそこに移籍する~」

 ワシの冗談にルカもりかりんも笑ってくれる。この風景も見られなくなるのかと思うと、やはり胸に来るものがある。会えずとも友人であることに変わりはないが、遠く離れてしまうのは寂しいかぎりだ。

「また日本に来るよ。向こうの休みは長いから」

 焼肉屋でルカの送別会も終え、いよいよ戦国メイド喫茶に来られるのも最後といった日。とにかく豪勢に、楽しく騒ごうと思い、友人連中とメイドさんとでルカを囲んでいた。悲しい別れなど似合わない、とばかりに馬鹿騒ぎをした。

「なぁ、ルカ! スイスにりかりん連れてってやれよ!」

「あ、いいかも、連れてって!」

 たくみんやりかりんも楽しげで、そんな冗談にルカも笑っている。最初に出会った頃と同じ、爽やかな笑みだった。

「うん、じゃあ、りかりんをスーツケースに詰めて持ってくよ!」

 ワハハ、ワハハ、と皆で笑う。とにかく楽しい思い出だ。そんな言葉を最後に、ルカは故郷スイスへと帰っていったのだった。

 ルカが日本を発ってしばらく後、ワシは彼の最後の言葉を吟味していた。
「いや、かなりヤベぇ発言じゃないか?!」

 うっかり忘れていたが、ルカも秋葉原に通い続けた猛者であった。ジョークのキレもヤバい方向に進化している。ある意味では、この街が一人のスイス人青年の人生を変えたのかもしれない。

 秋葉原は楽しく、また恐ろしい街だ。

(つづく)

 連載第8回は3/10(木)公開予定です。

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柴田勝家

しばた・かついえ
1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。著書に『クロニスタ 戦争人類学者』、『ヒト夜の永い夢』、『アメリカン・ブッダ』など。

Twitter @qattuie

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