よみタイ

ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、友人だと思っていた夢岡が、アプリ開発の妨害を図っていたことが発覚。ショックを受ける太陽だが、事態は一刻を争っていた……。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

第23回 人間諦めも肝心!? 最大のピンチに妻がかけてくれたひとこと

「ライジング!」 第23回

 郡家は後ろめたい気分のままビールジョッキを見おろしていた。
〝マンガホープ〟がローンチされ、Eセサミのプロジェクトチーム全員で打ち上げの飲み会が行われているのだ。郡家はチームを外されていたが、「おこぼれで呼んでやる」と氷上に言われて半ば強制的に参加させられていた。

「はあ……」
 郡家はため息をついた。〝マンガホープ〟の状況が気がかりで、どうしてもビールに口をつける気にならないのだ。そんな郡家とは対照的に、周りでは開発に携わったスタッフが飲んで騒いでいる。その中心にいるのは氷上だ。
 郡家は、ついさっき氷上とした会話を思い出していた。
「氷上さん、開発したアプリのローンチ日にプログラマー全員がパソコンを離れて飲んでいていいんですか?」
「あ? いいんだよ。お前は本当に細かいことばかり気にするヤツだな」
「でも、今ネットを見たらアプリが動いてないって報告が幾つも見つかりますよ。これってEセサミで対応すべきなんじゃ……」
「いいか? オレたちはナノ&ナノに依頼されてアプリを完成させた。そしてそのアプリをちゃんと納品したんだ。それにOKを出して配信を始めたのは向こうさんだ。つまり依頼は達成されたってことなんだよ。そのあとはアプリがどうなろうが知ったこっちゃない」
「でも――
「でももヘチマもねえ! もうお前どっか行け。せっかく呼んでやったのに。酒がマズくなる」
 そう言うと氷上は郡家に背中を向けてしまった。
 酒がマズくなる。それはこっちのセリフだ。いや、マズくなるというより、そもそもうまい酒ではない。郡家はそっと中座し、一人でEセサミへと戻って行った。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

新刊紹介

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

週間ランキング 今読まれているホットな記事