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ライジング!
今や、当たり前にスマホで漫画を読む時代。
才能ある作家と、新しい読者をつなぐために――編集者は新たな挑戦に乗り出す!
とある出版社の漫画アプリ開発に秘められた、汗と涙と笑い(と美食)を描くお仕事小説、開幕!

前回、ある大御所作家に電子化の許可をもらうという大ミッションを課された太陽は、なぜか怪しげなカラオケバーに連れていかれ……。

小説「ライジング!」は『週刊ヤングジャンプ』公式noteでも絶賛連載中です。

※この作品はフィクションです。作中に登場する個人名・団体名等は、すべて架空のものです。

第6回 大御所に気に入られる条件は、とにかくメシをうまそうに食うこと! 

「ライジング!」 第6回

 敷きつめられた丸い石の上に、四角く切られた石が整然と並べられ、先を進むと横一列で規則正しく落ちる水のカーテンがある。その水のカーテンはスクリーンのようになっており〝Quebec(ケベック)〟という文字が投影されて踊っている。
 道はそこで途切れていて、入り口は見当たらない。しかし――
「どうぞ」
 ボーイの男性の案内に従って思い切って進むと、水のカーテンが左右に割れてその奥にあるドアが「スッ」っと左右に開いたではないか。
 松田は自分がまるでRPGゲームの主人公になったような気がした。
 店内に入ると、小柴と野島の背中が見えたのでそっとついていく。すると赤い絨毯が敷かれた階段が出てきた。その階段を降り、暗い道を右に曲がると小さな部屋が出てきた。中にはソファーやクッションがあり、小さなモニターも付いていた。カラオケ屋っぽい要素といえば、その小さなモニターだけだ。
「コシさん、これ本当にカラオケ屋ですか!?」
「カラオケ屋でありレストランでありバーでもある。……ちょっと先に頼んでたもの受け取るから、適当に始めてて」
 そう言って小柴は店員とどこかへ消えてしまった。
「頼んだものって何ですかね、野島さん」
「カヌレだよ。天神先生の奥さんへの手土産用だな」
「カヌレ……って何ですか?」
「お菓子だな。ちくわぶを四センチぐらいに切って、周りを甘くコーティングしたような見た目だ」
「その例え合ってます!?」

「カヌレ」はフランスの焼き菓子
「カヌレ」はフランスの焼き菓子

「大体。店で出してたのが好評過ぎて、販売も始めたっていう経緯があるみたいだ。女性を中心に、流行しだしているらしいぞ」
「じゃあカラオケじゃなくて、カヌレを買うのがメインの用事だったんですね」
「そういうこと。……適当に頼んでいいか?」
 メニューを開いた野島に「はい」と返事をして、松田は改めてソファーに深く座った。思っていたより沈むのでちょっと怖い。そして自然と天井が目に入る体勢になったのだが、天井はなんと鏡張りだった。
 鏡の中には、不思議そうな顔でこちらを見つめる自分がいる。じっと目を合わせているうちに、松田は何だか愉快な気分になってきてしまった。手を振ったり、笑いかけたり、急に真顔になったり。自分と同じ動きをするのが妙に面白い。
「……鏡見るの初めてじゃないよな?」
 野島の声にはっと我に返った松田は、いつの間にかテーブルに料理が並んでいるのに気が付いた。長い間、鏡で遊んでいたようだ。急に恥ずかしくなった松田は、照れ笑いをした。
「へへっ……変わった店ですよね」
「お前には負けるよ」
 野島の言葉は、いつでも的確だ。

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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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