よみタイ

鈴木涼美「○○○な女~オンナはそれを我慢している」

元「めちゃモテ」女〜ぷっくり唇がここに来て大火傷を負ってる話

さて、めちゃモテ全盛期から10年以上が経過、北朝鮮の齎らす国際関係の緊張は具体的に広がり、各国で極右の存在感が増し、日本でも野党が解体を繰り返して苦戦し、めちゃモテぷっくり唇だけではどうやらやっていけなくなった2019年、女子たちのファッションはベーシック化し、ふわふわ揺れる白レースのスカートにミントグリーンのツインニットなんてあんまり見なくなった。

パーティ後、元めちゃモテ女が不機嫌になった理由

万人からちょっとずつ愛されてもそれほどいいことはない、と気づいたかつてのぷっくり唇たちも、ティントバームで効率よく血色の良い唇を作り、子育てをしながら仕事に戻ったり、旦那の赴任先から戻って子供の中学受験準備をしたりしている。

が、もちろんめちゃモテの究極系というのは一人にがっつり愛されることではなかったので、愚直にCanCam道を走った結果、多くの人に可愛がられはしたが、一人に選ばれることなく東京砂漠を現役で彷徨う女だっている。

ラディカルめちゃモテニスト。
今でも女子アナと服がカブりがちで、誰に紹介しても好感触だが誰にもがっつりはハマらない。

先月、そんなかつてのCanCam系モテ女子、今となってはエビちゃんよりエビちゃん系の同い年の友人(仮名エビ子)と、ほぼ同年代やや年上の男が開いたホームパーティーa.k.a自宅昼食会に出かけた。男は全員独身で、みんなやや自分大好きでやや散財癖があり女好きで仕事好き。学歴収入職業などの条件は悪くない。タワーマンションは麻布十番、鍋は生姜と白だし。
それこそCanCam全盛期だった10年ちょい前によくあったようなシチュエーションで、最近めっきり減ったけど、年に一回湧き起こる私の善意とやる気で開催された。

私とエビ子以外に、私の一個下と一個上の知人がいたのだけど、多少の盛り上がりを見せるのは一個下の元オリーブ少女周辺だけで、一個上もエビ子もいまいち盛り上がらない。
周囲が盛り上がらないので本人も盛り上がらない。
というかエビ子に至っては露骨にテンションが低い。感じ悪いに限りなく近いくらいノリが悪い。

元オリーブ少女は私なんかが知らないバンドのライブに行く約束があると言って少し早めに帰り、一個上はタクシーで直帰したので、私はエビ子と二人でミッドタウンの方まで歩きつつコーヒーを飲むことにした。

めちゃモテぷっくりクチビル
めちゃモテぷっくりクチビル

9条的な性格のエビ子は争いを好まないし、基本的にいつも無害な笑顔でやり過ごすのだが、マンションを出てコーヒーを買って100メートルほど坂を登ったあたりで、本日の男たちについて多角的な批判を繰り広げ出した。

「自分の趣味が1番で結婚には向かなそう」とか
「ワインがなくなってもつがない」とか
「今時喫煙者がいた」とか
「一番若い子にだけ興味を示した」とか
「40手前でも20代の子とそのうちさらっと結婚しようと思っていそう」とか。

彼女の批判が根拠のないものでないのは確かだが、10年前にも私たちはまったくもって似た属性の男たちと日々飲んでいたのもまた事実。
そして当然めちゃモテパステルカラーだったエビ子はトイレに行くたびに男がついていくほど、いい扱いだったし、本人のテンションも高かったし、軽やかなニットで飲み会から飲み会、デートからデート、男から男をホップスキップジャンプと渡り歩いて、「旅行行った時あんまり英語できない人やだぁ」とか「アクセサリーつけてる人は嫌かもぉ」とか「田舎の男子校出身の男の子って性欲強そうでこわぁい」とか言いつつ、英語下手な男にもアクセサリー男にも田舎出身者にもそんなに嫌われずにイケメンと別れたり金持ちと別れたりしていた。

20代はめちゃモテ、30代はノーモテの格差が半端じゃない

彼女はおそらく、私の周りにいる独身ミドルサーティーズの中でも最も30代に絶望しているうちの一人だ。というか「どうせ若い子がいいんでしょ」という意味で男に絶望しつつ、30代の自分をどう扱っていいのかよくわからずに憂鬱に過ごしている。

「結局、うちらの同年代でまだ遊んでる男って、若い時に遊び足りなかった男だからまだ落ち着きたくなくて結婚とかしないですみそうなまだまだ若い子と遊びたいし、若い時に若い女の子にモテなかったから今は若い女の子相手にしたいんだよね」
とは彼女の弁で、私も男は基本的には自分をバカにしたり冷笑したりしない若くてそこそこ無知で可愛くて素直な女の子が好きだと思っているので、ですよねぇと同意したのだけど、20代の時から大黒摩季に共感していた露骨にスレているタイプの元AV女優の感じるそれと、元CanCam女子大生の彼女が感じるそれは微妙にズレている。

私は20代30代通してセックスのお誘いや不倫のお誘いこそあれお嫁さんになってください的なお誘いとは極めて縁遠い人生を送ってきて、もはや最近スカートの下の劇場は閉鎖、気分はすでにお一人様の老後って感じだが、彼女の場合、20代と30代の落差がハンパじゃない。

簡単に言うと20代はめちゃモテ、30代はノーモテ。

1 2 3

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

関連記事

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

週間ランキング 今読まれているホットな記事