よみタイ

鈴木涼美「○○○な女~オンナはそれを我慢している」
よみタイでの大好評連載「アラサー女がそんなことで喜ぶと思うなよ」(書籍好評発売中)を終えた鈴木涼美の次なるフェーズは、オンナ目線の女性論。ふと見渡せば、耳に目につく、いろんなタイプ・○○○な女たち。女の敵は女じゃないけど、ちょっとどうなの、それでいいの、な現代女性像を浮き彫りに。

元「めちゃモテ」女〜ぷっくり唇がここに来て大火傷を負ってる話

めちゃモテとは05〜07年頃、発行部数が80万部近くまで伸び、女性誌で一人勝ちしまくりの全盛期だったCanCamが、看板モデルだったエビちゃんこと蛯原友里をアイコンに打ち出していたコピーで、当時の女子大をパステル系カラーに染め上げた戦犯でもある。

万人からちょっとずつ愛されるという戦略が万人女子のハートを掴んだ

ふわっと揺れるスカート、上品だけど若々しいツインニットなど、誰でもそこそこ似合って誰にでもそこそこウケがいい服をマルイなどで廉価で購入する、というのが当時の無責任であんまり趣味と頭の良くない若い女子の基本動作となり、アプワイザー・リッシェなどの簡単に他の色に染め変えられそうな淡い色のアイテムが是とされた。

当時まだ神戸女学院大で教鞭をとっていらした内田樹先生は著作の中で、CanCamの打ち出した「めちゃモテ」(つまりそれまで女子大生の象徴的な雑誌だったJJのファッション戦略「本命男性にとことん愛されること」に対して、「万人からちょっとずつ愛される」という戦略)はいかにも日本人の本態的メンタリティに親和する、とご指摘なさっていた。

例えば憲法9条は「みなさんにぜぇーったい危害は加えません♡うふ」という意思表示になっているのではないか、そしてそれはまさに国際関係におけるめちゃモテぷっくり唇なのではないか、と。

憲法9条の外交上の利点についてここで詳しく語るつもりはないけど、つまりそんな、深く長く愛し愛されるような辛抱強さや人間的な大きさなんかより、無害で軽薄なめちゃモテぷっくり唇が、男のハートを都合よく掴みたいと考えた当時の女子のハートを強く掴んだのでした。

重たい雑誌が提案したそんな軽やかで人の好みに合わせて何色にもなれそうな女の子たちは、たしかに男子たちのハートを上手く揺さぶり、先生に可愛がられ、サークルで大事にされ、会社で喜ばれ、多くはその中でそれなりの条件の男に軽やかに嫁いで行った。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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