2021.8.25
五輪開会式で4000食廃棄した組織委員会がついた“ウソ”。なぜ日本の弁当大量ロスは止められないのか
売れ残っても懐が痛まないコンビニ本部
なぜこのようなことになるかというと、大手コンビニの一部は「コンビニ会計」という特殊な会計システムを用いているからです。
期限が迫って売れ残っているものを、加盟店側は「見切り(値引き)」してでも売り切ったほうが取り分は大きい」のですが、逆に本部側は「廃棄した方が取り分が大きい」という不思議な仕組みです。
加盟店とコンビニ本部は、売り上げから売上原価を引いた売上総利益(粗利益)を分け合っています。しかし、コンビニ会計では、売れ残りなどで販売されなかった商品の原価を売上原価に含めず、さらに、廃棄コストの80%以上は加盟店が負担することになっているのです。
このため、本部側としては、商品が1つでも売れれば利益が出るし、たとえ売れ残っても捨てても懐が痛まないので、加盟店に発注さえしてもらえばこっちのもの。しかも力関係としては、加盟店との契約権を握っている本部の方が圧倒的に強いため、加盟店は廃棄ロスに苦しむことになってしまいます。
2009年6月に、最大手のコンビニは公正取引委員会から排除措置命令を受けました。加盟店に対し、弁当の見切り販売を禁じていたことが、公取の禁ずる「優越的地位の濫用」にあたるとされたためです。
以後、見切りを禁ずることはできないはずですが、前述の通り、契約を握っている本部にさからうことはできず、見切り販売をしている加盟店は、全国的にみれば圧倒的に少ない状況となっています。
もう一つ、弁当やおにぎりのロスを減らしにくい、食品業界の商慣習があります。それが「欠品ペナルティ」です。欠品、つまり品切れを起こすと、その分の売上を失ってしまうから、足りなくなるのは許されないのです。
コンビニやスーパー、百貨店などの小売店に食品を納める事業者は、「欠品したら取引停止」と言われます。だから、足りなくなるより余ったほうがまし、ということにならざるをえないのです。
そして、家庭と企業との大きな違いが「工業生産である」ということです。家庭であれば、ご飯が1合必要だったら1合だけ炊けばいいのですが、食品工場の製造ラインではそうはいきません。
私が取材した、炊いたご飯を納める会社は、一升(10合)以上を一気に炊いていました。たとえ1合分しか発注がなくても、工業生産は、製造ラインをまわすと、それだけ大きな単位でご飯が炊けてしまうのです。