2021.2.24
【卵】気温10度以下の冬場なら「57日間生で」食べられる
かつては乾物屋で売られていた
では、昔はどうだったのでしょうか?
『近代日本食文化年表』(小菅桂子著、雄山閣)には、明治34年(1901年)「鶏卵が歳暮用品として高値に」とあります。
冬の卵は日持ちがいいのでお歳暮として重宝され、卵の相場は年末に高値を示していました。
『日本食生活史年表』(西東秋男著、楽游書房)にも、明治34年に、「中国鶏卵の輸入額、史上最高を記録。輸入量は11〜1月の3ヶ月に多く、7〜8月が最も少ない」とあります。
やはり冬に重宝されたのですね。
かつて卵は、日持ちの長い「乾物」を扱う乾物屋で売られていました。
埼玉県で昭和28年(1953年)から創業67年になる養鶏場を営む篠原一郎さん(86歳)によると、1980年頃までは卵問屋がいて、4〜5月は卵が売れないから保管し、気温が下がってきた秋口、卵の相場が上がってから、乾物屋へ売りに出していたそうです。
「卵は固い殻で守られているので、外から危害が加えられない限り、長い間、日持ちする」と篠原さんは話します。
拙著『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)にも書きましたが、諸外国は、卵の賞味期限がもっと長いです。
フィリピンのショッピングモールで見たら、卵のブランドによって賞味期限が異なり、長いものでは期限まで1か月半残っているものもありました。
ドバイへの渡航経験がある飲食店のご主人からは、現地で半年間賞味期限がある卵を売っていたと聞きました。
「でも、海外では卵を生で食べないからでしょう?」と思いますよね。
私もそう思ってイタリア取材でお世話になったジャーダさんに聞いてみたのですが、イタリアでは小さい子どもに滋養をとらせる目的で、生卵に、砂糖やココアなどを混ぜて食べさせているそうです。
そんなイタリアのイータリーというスーパーでも、卵は常温で20日間の賞味期間を残して販売されていました。
ニワトリが産卵できるのは1日に1個
ところで、ニワトリが、1個の卵を産むのにどれくらいの時間をかけているのか知っていますか?
日本養鶏協会によれば、1日に1個が限界。
24時間以上かけて産み出しているといいます。
日本農産工業株式会社も「毎日産卵するニワトリもいますが、平均すると1年間で280個ぐらい」と説明しています。
篠原さんの養鶏場でも、「1羽が産める卵の数は、1年間に250個ぐらい」とおっしゃっていました。
そんな卵を、人間が短めに設定した賞味期限で捨ててしまうのです。
もし自分がニワトリだったら、1日以上かけて産み出した卵をポイっと捨てられたら、どんなにせつないでしょう。
そう思うと、スーパーで安く売られている卵も愛おしく思えてきます。
市販の卵パックには「過ぎたら、加熱調理して早めにお召し上がりください」と書いてあります。
心配されるサルモネラ菌は、十分に加熱すれば心配ありません。
24時間かけてニワトリが産み出した卵。最後まで大切に食べましょう。
【捨てないコツ】
・卵は賞味期限が短めに設定されている食材。もし賞味期限がちょっと過ぎていても、火を通して食べ切る。
・買ってきた卵はパックに入れたまま冷蔵室の奥へ。冷蔵庫ドアについている「卵ポケット」は揺れるので割れやすく、温度変化もあるため、保存に適さない。