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インパクトが強すぎる店主が待ち構える旨すぎる焼肉(その2)

年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

全てのお客を圧倒し、どう接していいか戸惑うほどインパクトが強い店主がいるお店、かつ、そこの焼肉が恐ろしく旨いという焼肉屋を「インパクトが強すぎる店主が待ち構える旨すぎる焼肉」として紹介するシリーズ。

前回はその1として、四谷にある「焼肉名門」、そして店主のヤッキー中村氏を紹介した。
シリーズ第2回で紹介したいのが、東京都江戸川区にある「ジャンボ篠崎本店」。

ジャンボは現在、篠崎本店以外に本郷店、本郷店のすぐ目の前にある、はなれ、白金店、そして香港の5店舗に広がっている。
焼肉マニアだけでなく、一般の人達からも絶対的な支持を集めるジャンボの伝説は、東京の果て・江戸川区篠崎で始まった。

この場所に全国から焼肉好きが集まるのだ。

かつてジャンボの店主は同地で、パフェが人気の喫茶店「木の実」を営んでいたのだが、高齢となった店主のお母さんを迎えるにあたって、「木の実」を「ジャンボ」に変え、焼肉屋をスタートさせた。
ジャンボの焼肉に味を左右するタレは、そのお母さん秘伝のものだという。

元号が平成から令和に代わった今から30年前、平成という時代が始まったばかりの平成元年にジャンボは産声を上げたのだ。

今のジャンボの盛況ぶりからは想像しにくいが、最初の数年間は空席も目立つような状況だった。
しかし、そのまま普通の焼肉屋で終わらせないのが店主・南原さん(肉バカは”マスター”と呼んでいる)の底力だろう。

より良い牛肉を求めて仕入れ業者を変えたり、メニューにも様々な改良や新たな試みがなされた。
そこで生み出されたのが「希少部位」だ。

今から20年前の焼肉といえば、タン塩にカルビ、ロース、そしてハラミというのが一般的だった時代。
その時代に裏メニューとしてイチボ、シンシン、トモサンカクといった具合に、食感や味わいの違う希少部位の楽しみ方を焼肉好きに広めてくれた。

肉バカも初めてジャンボで食べたミスジやザブトンには度肝を抜かれ、一瞬でその虜になってしまった。

今では主流の薄切りカットも、ここジャンボが焼肉業界に広めたと言っても過言ではない。
硬い食べ物があまり好きでないマスターが、柔らかくスーと口の中で溶けるように消えていく食べやすい厚さを生み出したのだ。

当然のことながら、この厚さもただ薄ければ良いという単純なものではなく、ミスジのような真ん中に筋が入ったような部位はより一層薄くカットされている。
こういった徹底的な追求が今のジャンボの発展に繋がっているのだろう。

ジャンボの野原焼きをご存知だろうか。
すき焼きの様ような薄切りのサーロインを焼き、卵につけて食べるメニューだ。

今では多くの焼肉屋が取り入れているメニューだが、これもジャンボ発祥の食べ方ではないだろうか。
とにかく全国の焼肉屋に注目され、それらを引っ張ってきたのがジャンボであり、マスターなのだ。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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