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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」

インパクトが強すぎる店主が待ち構える旨すぎる焼肉(その2)

ジャンボ篠崎本店は、最寄りの篠崎駅からもバスかタクシー、という不便な立地にある。
数分歩けば千葉県との県境の江戸川が流れている。
商店街の入り口に突如現れる黄色い「ジャンボ」の文字。
階段を登り店内に入ると活気に満ちた空間が広がる。

Tシャツのスタッフに混じって、白いコックコートを着た初老の男性がいたら、それがジャンボを創り上げたマスターだ。
マスターにオススメを聞けば、「うちは並で十分旨い!」と言い切り、運ばれてきた並ロースを見て、食べて、納得する。
何しろ上ロースといっても通用するのではないかと思える美しいウチモモ等(日によって違う)が使われている。

ここからはマスターのオススメに従って食べ進めるのが間違いない。
野原焼きを頼めば、「黄身を箸で掴んで持ち上げてみろ!」とこだわり抜いて行き着いた卵の説明が始まる。

ちなみにこの卵は野原焼き以外をつけても美味しく、最後はマスターが京都から取り寄せているお醤油を垂らしてTKGにするのが、マスター流の〆方。

希少部位を頼み、マスターがご機嫌であれば焼いてもらえることがある。
「1、2、3、1、2、3」と表を3秒、裏も3秒といった具合に、それぞれの部位を一番美味しく焼いてくれる。

また、運が良ければ別バージョンもお目にかかれる。
「ワン♪ツー♪スリー♪」と軽快な掛け声で焼いてくれるのだが、マスター曰く「ワルツ焼き」だそうだ。

マスターの気分がノリノリの時は、食後に手品を見せてくれることもある。
テーブルで突如始まる手品に、大人も子供も大興奮。

お客さんを喜ばせるマスターのホスピタリティの高さの賜物だ。
ちなみに肉バカは3種類ほどの手品を見せてもらっているが、バリエーションがいくつあるのかは分からない。

ジャンボには家族連れや焼肉好きの集まりなど、多種多様なグループが焼肉を食べに来る。
それに対してマスターは、フレンドリーにテーブルを回り、雑談したり、焼き方を教えたり、たまに手品をしたり。
そうやってコミュニケーションを取りながら、焼肉の美味しさと楽しさを伝えている。

だからこそ、わざわざ東京の果てに人が集まるのだ。
ジャンボの最強のタレの隠し味にはマスターの優しさが入っている。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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