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焼肉・熟成肉ブームの時に誰も教えてくれなかった【A5神話】の真実

和牛の改良は凄いスピードで進んでいる。
個体はより大きく、よりサシが入る血統も研究されている。

それに加えて生産者の肥育技術もどんどん進化し、「A5」の出現率が大きくあがっただけでなく、同じ「A5」でも、そのサシの占める量は昔とは比べ物にならないほど多い。

「適度」という概念

だが、コーヒーに砂糖を入れて飲む場合、スプーン1杯であれば美味しいかもしれない。しかし10杯入れれば、甘すぎて美味しく感じないだろう。
食パンを食べる時にバターを塗る場合、パンと同量のバターを塗ったら具合が悪くなるだろう。

それは牛肉も同じだ。

脂質の悪い牛肉は美味しくないだけでなく、どんなに脂質が良くてもサシの量が多すぎれば(例えば、肉の半分以上が脂とか)、牛脂をかじっているような感覚になってしまう。
焼肉で食べる場合、すき焼きで食べる場合、しゃぶしゃぶで食べる場合、ステーキで食べる場合、それぞれで違いはあるのは間違いないが、それぞれに美味しく感じる「適度な霜降り」というものがあるはずだ。

決して、サシの量が多ければ多いほど美味しいということはない。
何故なら、我々は脂の塊ではなく、肉を食べているのだから。

和牛が誇る霜降り

霜降りについて色々書いたが、結局肉バカは黒毛和牛の霜降りが大好きだ。
だからこそ、本当に美味しい霜降りの牛肉がもっと増えてほしい。

その為には、ただ「A5」の牛肉ではなく、等級に関係なくこだわりの詰まった牛肉が今よりももっと市場で評価される必要がある。
そうなれば自然と霜降りの量に関係なく、脂質の良い美味しい牛肉が増えるだろう。

サーロインやリブロースを見てみれば、「A3」だって立派に霜降りだ。
そして、肉そのものの味を追求して、結果として「A5」になった牛肉というものは最高に美味しいはずだ。

最高の霜降りを食べられる店

最後に肉バカから、本当に美味しい霜降りの牛肉が食べられるお店を教えたい。
今まで吠えた話が真実であることを誰もが実感できるだろう。

肉バカが絶対的に信頼を置くのが「銀座吉澤」だ。
場所は銀座3丁目で松屋の裏手にある。
東京食肉市場の老舗仲卸直営のすき焼き店だ。

扱う牛肉は、目利きの職人が全国の産地を回り、加えて1頭1頭の状態を確認して選んだ雌牛のみ。
雌牛は去勢牛と比べて脂質が格段に素晴らしい。
さらに肉本来の旨味がギュッと詰まってくる長期肥育された個体が揃う。
市場で競り落とされた枝肉は、専用の冷蔵庫で旨味の華が咲き開くまでじっくりと寝かされ、真空パックなどされることもなく、丁寧に銀座まで運ばれる。

個室が多い銀座吉澤では、仲居さんが1枚づつ丁寧に焼いてくれる。
銀座吉澤特有の四角いすき焼き鍋の中で音を立てる牛肉からは、ヨダレを防ぐことが出来ないほどの良い香りが放たれる。

口に含めば、牛肉がホロホロとほぐれ、割下や卵に負けない牛肉の旨味が存在感をアピールする。

ちなみに、店舗の隣には銀座吉澤の精肉店があり、すき焼き店で食べた牛肉と同じものを購入することも可能だ。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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