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焼肉・熟成肉ブームの時に誰も教えてくれなかった【A5神話】の真実

では、「A5」の牛肉は本当に美味しいのか。

この答えは「はい」でもあり、「いいえ」でもある。

忍び寄る「A5」神話の崩壊

かつての和牛は、今ほどA5等級が溢れていなかった。
質の良い子牛を丹精込めて肥育する目利きや技術、熱意の積み重ねが結果として「A5」に繋がったのだ。

ここで大事なのが「結果として」ということだ。

生産者の目的は、あくまで美味しい牛を肥育することが第一と言える。
しかしながら、日本人の研究熱心さ、技術の高さが、より牛肉に霜降り(サシ)を入れることを可能とした。

サシの口溶けや後味に影響する脂質や、肉そのものの旨味といった要素より、単なるサシの量に比重が置かれ出し、ここで目的が「美味しさ」よりも「A5等級」になってしまった生産者もいるだろう。

何故なら生産者は趣味で牛を肥育しているのではない。
ビジネスとして牛を肥育しているから。

もちろん牛肉の値段は等級だけで決まるものではない。
しかしながら「A5」の牛肉を欲しいという需要が高まれば高まるほど、「A5」の牛肉の値付けが高くなる傾向にあるのは間違いない。

つまり、最初の質問に対する答えは、美味しい「A5」もあれば、そうではない「A5」もあり、等級そのものの味に対する影響力が落ちてしまっている、だ。

こだわった生産者が肥育した牛は、脂質が極上で口に入れた瞬間、芳醇な香りが鼻腔をくすぐり、肉の旨味が噛むほどに溢れ出てくる。
こういった牛の場合は、霜降りの度合いが増す「A3」より「A4」、さらに「A4」より「A5」が間違いなく美味しいだろう。

逆に、サシの量だけを目的に肥育された牛は、食べた瞬間に脂のベタつきとしつこさを感じ、肉の旨味も脂に負けて感じ難い。
こういった牛は、「A5」よりも「A4」や「A3」の方が食べやすい場合が多いだろう。

大事なのは霜降りの量ではなく、脂の質と肉そのものの質なのだ。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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