2019.2.8
肉バカが1年間食べまくって選んだ、焼肉以外の☆☆☆肉料理店3選【焼ニシュラン2018(番外編)】その1
肉バカが1年間焼き歩いた集大成を【焼ニシュラン2018】として紹介したが、和牛を愛してやまない肉バカは、焼肉以外も当然日々最高の牛肉を求めて食べまくっている。
今回は【焼ニシュラン2018(番外編)】として、焼肉以外のジャンルの牛肉料理店の中から、食べた瞬間に涙が出るほど感動する☆☆☆店を紹介したい。
【これぞ究極、という言葉が相応しい】☆☆☆[麤皮(あらがわ)]
「麤皮」と言えば東京でも1,2を争う高級ステーキ店として有名だろう。
そして、その本家が神戸の三宮にあることをご存知だろうか。
神戸三宮の「麤皮」は東京の麤皮や「哥利歐(ごりお)」とは経営が違う。
『東の次郎は鮨を握り、西の次郎は肉を焼く!』と小山薫堂さんに言わしめ、肉焼き名人として賞賛されていた山田次郎さんのステーキをかつてここでは食べることができた。
現在は次郎さんの息子である山田三也さんがシェフとして炉窯の前に立ち、さらにその息子さんがサポートをする。
冷蔵庫から取り出されたサーロインのブロックは濃い小豆色。
分厚くカットされた牛肉は串を打たれ、炉窯に入れられる。
山田さんの全神経は炉窯の中の牛肉に向けられ、一刻一刻の肉の変化を見逃さない。
そして、表面を紙1枚の厚さでパリッと焼き上げながら内部はうっとりするような赤みを残して仕上げている。
一瞬生焼けかと思ってしまうその焼き上がりは、食べてみると中心までちゃんと火が入っていて、赤身の旨みが口中で最高潮に解き放たれるアメージングな加減だ。
焼き技術もさることながら、最も驚愕すべきは素材である牛肉そのもの。
ここまで味わい深く、繊細な食感のものには生まれてこの方出会ったことがない。
近年、炉窯ステーキのお店が増えたのは嬉しい限りだが、素材と火入れ、ともにこの麤皮が抜きんでているのは否定できない。
何がここまで違うのか、正直それがはっきりとはわからない。
ただ、その圧倒的な味わいの差は紛れもない事実なのだ。
牛肉を食べて震えた経験のまだない人は、ぜひ神戸三宮の麤皮を訪れてみてほしい。
【和牛の源流を感じる本物の小豆色】☆☆☆[くいしんぼー山中]
牛肉の世界にハマり始めた頃、雑誌やテレビ、ネットの情報を重宝し、それらを盲信していた時期がある。
しかし欲望のおもむくままに食べ続けるにつれ、それらの作り込まれた情報がほとんど必要なくなった。
食は結局のところ好み。
好みは千差万別。
唯一無二の正解など存在しない。
だからこそ、溢れる情報を鵜呑みにするだけでなく、さまざまなことを知ったうえで自分の好みで選んでほしい。
自分自身の感性に合った牛肉を見つけ、そこを掘り下げていくことで、自分の中に軸が出来上がる。
そして私の牛肉人生の中で最も衝撃的な出会いだったのが、ここ「くいしんぼー山中」との出会い。
今まで食べ込むことで出来上がっていた概念が一度に全て崩れ去り、新たな太い軸が出来上がった。
それほど今まで食べてきた牛肉と違う。
全くの別物だった。
店主・山中さんが牛肉に大事だとおっしゃるのは”照りと粘り”。
それらを併せ持つ牛肉は福永さんが肥育する近江牛。
兵庫県産但馬牛を素牛とし、特に美方郡産を中心に肥育を行っている。
月齢はそのほとんどが38ヶ月位で、もちろん全て未経産の雌牛のみだ。
そして味を追求した結果、一切のビタミンコントロールをおこなわない。
この福永さんの近江牛はセリに出ることがなく、山中さんの元に送られる。
高値で競り落とされるようにサシを入れる必要がないのだ。
だからと言ってサシが不要なわけではない。
ビタミンAを欠乏させることなく、じっくりと手間暇をかけて飼い込んだ牛であるという条件の下なら、サシは無いよりもあった方が旨いと言う。
福永さんがここまでこだわれるのは山中さんあってのものであろうし、山中さんが理想とする牛肉を扱えるのは福永さんあってのものだろう。
ここまでの関係が構築できて、初めてこの奇跡の牛肉が食べられるのだ。
そしてこれほどの牛肉であればこそ、鮮度が良ければ良いほど旨い。
屠畜して冷蔵庫で冷やし、カットを行い、それを発送するという工程を踏まえると、最も鮮度が良い状態で食べられるのは、屠畜2日後。
肉運が強い人であれば、この屠畜2日後に出会えるかもしれない。
また、良い牛肉を表現する言葉として昔から”小豆色”という言葉が使われるが、今までこれ以上の小豆色は見たことがない。
肉の断面は空気に触れることで鮮やかな色合いに変化するのは承知しているが、それを考慮しても今まで見たこともないような深い小豆色の肉肌なのだ。
そして本来であれば判が大きなリブロースであっても、惚れ惚れするような判の小ささ。
とにかくくいしんぼー山中で非日常の牛肉をとことん食べみてほしい。
間違いなく今までの牛肉観が変わるはずだ。
【和牛をさらなる極みにまで昇華させる日本料理の技術】☆☆☆[にくの匠 三芳]
和牛はその名の通り、”和”の食材。
その”和”の食材を、さらに昇華させるのは日本料理であるはず。
そして日本料理という枠組みの中でこれほどまでに和牛を昇華させるお店は全国を探しても「 にくの巧 三芳」以外にないだろう。
祇園の八坂神社のほど近く。
伝統ある歴史と格式を感じさせる祇園の街並みに溶け込んだ店構え。
白地に三芳と染め抜かれた暖簾をくぐると、そこには伝統と革新を融合させた”肉の桃源郷”が存在している。
店内はカウンターとテーブル席があるができることならカウンターに陣取り、店主の伊藤さんの手際の良い仕事振りを目の前で楽しむことをオススメしたい。
割烹らしく丁寧な仕込みをされた素材が、お皿の上で芸術品に変貌していくさまに嫌でもテンションが上がる。
日本料理の世界を覗いてみると魚に比べて肉へのアプローチはかなり限定的なようだが、伊藤さんの手から生み出される肉料理はどれもしっかりした和食のテクニックを踏襲しつつも、食べ手の予期せぬサプライズが織り込まれている。
例えば、定番となっているタンの昆布締めは、タンの水分が昆布に吸われて身が締まりことで昆布の旨みが見事に乗せられているうえに、香りが際立つ温度にいたるまで絶妙な仕上がり。
また、お皿の上の盛り付けには極められた美の世界が構築され、味だけではなく、見た目でも心から満足できる。
まさに牛肉を扱わせたら日本最高の職人といっても過言ではない。
そんな最高峰の職人が扱う素材ももちろん最高峰だけが揃う。
純但馬血統の雌牛の中でも長期肥育された神戸ビーフ、特産松阪牛といった、他ではなかなかお目にかかれないような個体ばかりが鎮座する。
もちろん牛肉以外の素材も全てが選び抜かれた一級品。
最近は牛肉を扱った割烹系のお店も増えつつあるが、圧倒的に他のお店とは一線を画す。
決して安い価格ではないが、その素材と技術を考えれば間違いなく高くはない。
このお店を訪れるためだけに新幹線で京都に向かう価値がある。