よみタイ

第1回  国内外の美食家を虜にする美人シェフの店「été(エテ)」

「綾子さんに聞けば間違いない!」――美味なレストランも気の利いた手土産もとびきりのお取り寄せも、おいしいものには死ぬほどうるさいギョーカイのみんなが頼りにするのが、フードパブリシスト高橋綾子のグルメ手帖。誰もがうなる美味の数々を惜しげもなく公開します!

はじめまして!

フードパブリシストの高橋綾子です。フードパブリシストって何? と思われた皆さま、まぁ、簡単に言うと食にまつわるさまざまなことを世に広めていくお仕事です。今まで個々の媒体で書いていましたが、「あちこち探すのが大変だから、どこかひとつにまとめてほしい」とのありがたいお声を多数いただいており、ブログを立ち上げるかなぁと思っていた矢先に、「ウェブで連載しませんか?」との、これまたとてもありがたいお話をいただきましたので、これからこちらに書き連ねていくことにしました。

ここではレストラン、食材、ジュース、お酒、お菓子、地方の物産、時には自分で作った料理など、私が「おいしい!」と思ったモノやコトをご紹介していきます。

……が、はじめに言っておきます!
「おいしい」は人によって違います。天候や体調、お店の雰囲気やサービス、誰と一緒かによっても変わります。金銭感覚はその最たるもので、ディナーに10万円出してもへっちゃらな人がいれば3000円で高いなと思う人もいます。「おいしい」は主観だ! 正解はないのです。

じゃ、どの情報を信じれば良いのか? それは自分と好みが合う人を見つけることです。これからここでご紹介するものは、私基準の「おいしい」なので、まずは私のプロフィールをざっくりご説明いたしましょう。

ファッションブランドのPR・広報という仕事に就いてからおいしいものに目覚め、仕事帰りはほぼ外食、20代半ばにしてエンゲル係数は大幅にアップ。気がつけば分厚い「おいしいレストラン手帖」が自前でできあがりました。その膨大なデータを友人や知人に提供していたところ、いつしか、“おいしいものは高橋綾子に聞け”という噂が広まり、ライターとして食の世界へと足を突っ込んだ次第です。

今も年間1000回を超える外食生活をおくり、苦手なジャンルはないけれど、ニンニクで胃もたれする体質。バナナアレルギーでメロン、キウイ、納豆、茄子、虫は苦手。お酒もお料理とともにたくさん飲み(私、割り勘負けはしないので!)、甘いものも大好き。ディナーでの支払いは1回1~2万円を妥当と考え、お鮨は3万円を超えたくない(あくまで希望……でも呑んべえのため超えてしまうことも)。

リーズナブルな店から高額グランメゾン、老舗から新店まで網羅。ランチよりはディナー重視。居住地の関係で東側より西側エリアが得意。自身が食べたくておいしいものだけを提供する店「uchi(うち)」を2018年2月、下北沢にオープン。こんな人間です。

ここに登場する店やモノを、騙されたと思っていくつかトライしてみてください。〝おいしい感覚″が一緒ならば、もう他の情報は必要なし!と、きっと思っていただけるはず。前置きが少し長くなりましたが、みなさま、どうぞ末永くお付き合いくださいませ。

さて、記念すべき第1回目は…こちら、フレンチレストランétéのケーキです。

その美しさとおいしさには比類がない……通常étéのHPで予約購入するのですが、あまりの人気で、その艶姿を見ることすら困難になった“幻のケーキ”状態。でも何とかして手に入れたくなるのが人間です。チャンスは年に数回あるデパートの催事販売だけど、ネット予約分は一瞬にして完売してしまいますから当日並ぶしかない。結果、朝5時半から長蛇の列となります。でもね、それだけの価値があるのです。なぜならば、いま、世界から注目されている庄司夏子シェフの傑作ですから。

この旬のフルーツを使った花モチーフのケーキ、Fleurs d’été(フルール・ド・エテ)が誕生したのは2014年。代官山「ル・ジュー・ド・ラシェット」、外苑前「フロリレージュ」で料理人として研鑽を積んだ庄司さんが独立した年でした。当初はレストランではなくコフレ・デセール専門店をオープンしたのには誰もが驚きましたね。ちょっと〝庄司さん″って呼び方に違和感があるので、この後はいつものように“夏ちゃん”と呼ばせていただきます。

これらの世にも美しいケーキたちのほとんどは洋服やコレクションを見てイメージするそう。例えば「桃」はシャネルのアイコンバッグ「マトラッセ」からインスパイアされ、カットした桃をキルティング模様のように並べています。
じゃ、「ぶどう」は?「ぶどうはコム・デ・ギャルソンや草間彌生さんのドットからですね」と夏ちゃん。なるほど、確かに水玉だわ。

ご覧ください!
箱を開けた瞬間に目に入ってくるこのビジュアル!
歓声を上げない人はいないでしょう。

「うちのケーキは〝おいしい″が当たり前。見た目が派手でもおいしさが伴わないと意味がないです」と、きっぱり。

Fleurs d’étéは、レストランで働いていた時、記念日のデザートに、ありとあらゆるフルーツでバラを作っていたことで完成したもの。デビューはétéのアイコンとなる「マンゴー」。いつでもメディアに出せるようにと、通年手に入るマンゴーを素材にしたそう。プロモーションまで考慮して商品化するシェフって私の知る限り数人しかいない。

では、おいしくする秘訣は?
「デザインができると味をはめ込んでいきます。まずは良い食材かを見極める。そして料理人時代に培った経験で“味をはめて”いきます」
味をはめ込むって夏ちゃんらしくて面白い表現だな。

それと、常にブラッシュアップすること。夏ちゃんはどんどん新メニューを出すことはしない。「磨き上げることで〝究極のひと品″ができるわけで、毎年、もっとおいしくできる〝何か″に気がついてしまいます。作り続けるとその先が見える。そういうのが良いなと思っています」と。

でも、久々に新作が登場する予定。「グレンチェック」から閃いた秋の味覚、それは、「マ○ン」ですって! 

「私が修業したレストランでは新入りはデザートからスタート。それから前菜→魚→全体的にシェフの手伝いという感じでした。だから独立するまではケーキを作るより料理を作る方が長かったんです」。

このケーキによって夏ちゃんはパティシエとして世界にも名を轟かせる超有名人になったけれど、元々は魚をガンガン捌くような料理人なのです。
食べてみるとわかるけれど、実際、夏ちゃんのケーキはそれほど甘くない。素材の持ち味を生かして味をつける……まさに〝料理″ですね。「私が酒飲みだから」と夏ちゃんは言うけれど、お酒を飲みながら食べられるのは本当です。事実、私はワインとともにいただいていますから。

スタートはコフレ・デセール専門店にしたけれど、いずれいつかは絶対にレストランにすると決めていたそう。
「24歳で起業した時は料理人としての知名度も実力もまだまだで、若いし、女性だし、突然レストランをやってもお客さまに来てもらえるかは未知でした。だから構想が出来上がっていたケーキをまず販売したのです。ありがたいことに1年で人気が出て売上が安定したタイミングで、ケーキを買っていただいた方にお食事をアプローチしたのがレストランの始まりです。だからレストランは最初から予約でいっぱいでした」。

この若さでこんなに自分を客観視できて成功する方法を考えつくシェフが何人いるのだろうか。1日1組、最大4名まで(たまに昼夜2組になることも)、の小さなレストランには、今や海外のすごいシェフや熱烈なファンが予約の争奪戦に加わっている。
店に到着すると予約時間に合わせて焼き上げるブリオッシュの甘い匂いでお腹はぐーぐー、食べる準備は万端!
あぁ、今日も夏ちゃんの戦略に間違いなくハマってしまうのである。

料理撮影/八木竜馬

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高橋綾子

たかはし・あやこ●フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレス時代から培った〝食″へのこだわりは、舌の肥えた業界人も頼りにするレベルの高さ。年間1000を超えるという外食の日々が築き上げたおいしいもの好きが嵩じて、ついに2018年2月に東京・下北沢にてレストラン「üchï(うち)」をオープン。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
Facebook→https://www.facebook.com/ayako.takahashi.1671

uchi→http://uchi.tokyo/

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