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小池克臣「No Meat,No Life.を生きる男の肉だらけの日々 肉バカ日誌」
年間200食もの牛肉を食べるという、名実ともに肉バカ、小池克臣が日々蓄えてきた肉への愛、知識、体験……そのすべてを注ぎ込む究極の肉コラムがここに。肉好きはもちろん、そうでなくても知っておくべき肉のあれこれが満載!

第1回 【焼肉屋で絶対に失敗したくない人に捧げるタン塩選び】

春は出会いと別れの季節ということで仲間との時間を大切にするために焼肉。
暑い夏にはスタミナチャージのために焼肉。
涼しくなった秋は健康診断シーズンということで身体に良いサラサラな脂と上質なタンパク質を摂取するために焼肉。
牛肉が最も美味しくなる冬はもちろん焼肉。

……焼肉を愛し和牛を愛して、1年中焼肉を食べ続けている肉バカ・小池です。この連載では、焼肉を中心とした牛肉料理やそもそもの牛肉について、肉好きであれば絶対に知りたい、絶対に知っておかなくてはならない肉知識をめいっぱいお届けします!

 

最初のタン塩でつまずいてはすべてが終わりです!

さて、満を持しての第1回は「焼肉屋で絶対に失敗したくない人に捧げるタン塩選び」。

誰もが焼肉屋で最初にオーダーするタン塩。ここでつまずいてしまっては、その日の焼肉が台無し。いかに最高のタン塩を食べるかが、その日の焼肉の運命を左右するという大切なことを知ってもらいたい。

タンとはご存じの通り牛の舌のことで、当たり前ですが牛1頭につき1本しか取れないもの。その重量はだいたい2.5kgくらいで、皮を剥いて掃除をすると半分ほどに、根元の柔らかい部分はわずか300gから400g程度しか取れません。

いったいどんなタンが最高と言われているかというと、なんといっても味がしっかりとしていて脂ものっている黒毛和牛のタンである。
黒毛和牛のタンの皮は黒い部分が多いので、一般的には黒タンと呼ばれている。ただし、東京に焼肉屋が2000軒以上あるのに対して、東京食肉市場で1日に屠畜される黒毛和牛の頭数は300頭位。いかに黒タンを確保するのが難しいかはご想像ください。

また、黒毛和牛以外の国産牛も数は多くないが、タンの皮が白いものがほとんどである所以から白タンと呼ばれる。ではほとんどの焼肉屋のタンがどこから来ているのかというと、輸入に頼っているのが実情である。海外の牛のタンは脂があまりのっていなかったり、輸送状況などの影響もあって、少し味が弱かったり臭みがあったりする印象があるが、最近は原産国によっては上質なタンも輸入されてきている。

ちなみに海外の牛でも皮が黒いタンがあって、それを黒タンとして提供している焼肉屋もある。黒タンの定義がしっかりしていないのが原因だが、《黒タン=黒毛和牛のタン》と思っていると、違う場合があるので注意が必要だ。

ここでタンの流通についても知っておいてほしい。牛肉の流通は正肉と内臓の大きく2つに分かれ、タンは内臓に分類される。正肉はセリにかけられ、良いものほど高値で売買される。一方、内臓にはセリが存在せず、ほぼ一律の値段で売買される。では良い内臓とそうでない内臓はどうやってお店に割り振られるのか?

それは焼肉屋と内臓業者の信頼関係によるものが大きい。
だからこそ、下町の哀愁漂うような小さな焼肉屋で極上の黒タンに出会えたり、まだ内臓業者と信頼関係が築けていないオープン間もない焼肉屋は黒タンを仕入れるのに苦労していたりするのだ。

さて、ここまでタンを取り巻く状況を話したが、実際どこで最高に旨いタン塩が食べられるのか、ここは肉バカが絶対的にオススメする焼肉屋を紹介しよう。
ぜひこれからの焼肉ライフに活かしてほしい。

○焼肉しみず(東京・不動前)

肉バカが散々焼き歩いた中で、焼肉しみずほど安定してハイクオリティの黒タンを仕入れているところを知らない。
ここでは、焼肉屋を始める前から付き合いのある内臓業者から黒タンを仕入れている。通常は配達されるところを、店主の清水さんは毎日自ら内臓業者まで取りに行き、日々信頼関係を高めていった。
そんなしみずの黒タンは火を入れると得も言われぬ香りを放ち、舌の上に甘みと旨味の層を幾重にも重ねてくれる。焼肉しみずの名物として厚切りタン塩がある。もちろん最高の黒タンなので薄切りも旨いのだが、2cmを超える分厚さの厚切りタン塩は、サクッとした歯切れとプリプリとした食感が同時に味わえ、口の中で強烈な旨味が爆発する。

この厚切り上タン塩を美味しく食べるためには焼き方にコツがあり、火力の弱い網の端っこでこまめに返しながら焼く必要があるので注意してほしい。
また、席の予約時に厚切りタン塩も予約キープしておくことは必須だ。

○静龍苑(東京・森下)

下町情緒漂う森下の新大橋通りを歩くと怪しくオレンジ色が光っている。お世辞にも綺麗とは言えないその外観はどこにでもありそうな町の焼肉屋さん。扉を開ければさらにノスタルジックな雰囲気が出迎えてくれる。

静龍苑には2種類のタン塩が存在する。1つは中タン塩。はっきり言って、静龍苑でNo.1のおすすめメニューである。薄切りのタンを覆い尽くす塩胡椒にネギ、ニンニク。サシの入ったタンはサクサクとした食感、口の中で弾けるようなジューシーな旨みは爆発的なインパクトを持つ。タンは黒とか、タン本来の旨みとか、そんなことさえ軟弱な思考と思えてしまうほど強烈な旨さ。

もう1つはタン塩。「上」とはついていないが、静龍苑で最もランクが高いのがこのタンだ。タンの本当に根元の部分だけを使っていて、サシの入り具合は中タン塩と明らかに違う。ただし値段も相当違う。質と値段を考えれば中タン塩で十分なのだが、肉バカはこちらの〝タン塩″を頼むという行為をなぜか続けてしまう。

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小池克臣

こいけ・かつおみ●1976年、神奈川県横浜の魚屋の長男として生まれたが、家業を継がずに肉を焼く日々。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、さらには和牛そのものの生産過程、加工、熟成まで踏み込んだ研究を続ける肉の求道者。著書に『No Meat,No Life.を実践する男が語る和牛の至福 肉バカ。』がある。
公式ブログ「No Meat, No Life.」→ http://d.hatena.ne.jp/BMS12/

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