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殴る蹴るだけがDVじゃない【逃げる技術!第2回】あなたの周りにも隠れ被害者はいませんか?

「結婚情報誌」はあるのに、どうして「離婚情報誌」はないの? モラハラやDV・虐待から逃げるのはこんなに大変なのに……! じゃあ、ないなら自分でつくろう! と始まったのがこのエッセイ。

どこからがDV? 相談窓口は? 「養育費」じゃなくて「婚姻費用」って何? 調停って何ヶ月かかるの? 費用は? ……などなど、最初はギモンの連続。警察や児相の勧めに従って、2人の子連れで家出した著者が、同じ状況にある人にはもっとスムーズに知識を手に入れて「これからの人生」を前向きに考えてほしい、という思いで書きつづります。モラハラやDVから「逃げる」ことは、負けや失敗ではなく「自分らしさを取り戻す戦い」なのです!

イラスト/藤井セイラ 監修/太田啓子弁護士(湘南合同法律事務所)

モラハラは、人の心を壊します

今回は、そもそもモラハラやDVってなんなの? というお話から。

いってみればモラハラというのは「魂の殺人」(by アリス・ミラー)だと、わたしは考えています。モラル(moral)というと日本語では「道徳」という訳語がすぐに思い浮かびますが、「心の、精神の」ととらえたほうがわかりやすいかもしれません。モラル・ハラスメントとは「精神的な嫌がらせ」ということです。

DVというと、殴ったり蹴ったりというイメージがありますが、実際には肉体的暴力だけではありません。性的暴力や社会的隔離など、DVにはさまざまな形態があり、モラハラもまたDVの一要素なのです。

では、DVとはなんでしょうか。こちらはいうまでもなく「domestic violence/ドメスティック・バイオレンス」の略語です。ドメスティックというのは「家庭内の」という意味ですから、DVというと配偶者や同棲相手、恋人といったパートナーからの暴力を意味します。

家庭というのは家の「内側」ですから、DVは「人目のないところ」で行われることが多いといえるでしょう。

Tips 1
モラル・ハラスメント=精神的嫌がらせ。DV=家庭内やパートナー間での暴力。
モラハラはDVの一形態です。

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DVは「男性→女性」だけではありません

最新の内閣府のDV調査によると、「女性の4人に1人、男性の5人に1人が「配偶者から暴力を受けたことがある」と答えています(内閣府「男女間における暴力に関する調査」3年に1度実施、令和2年度)。

「何度も受けた」と答えたのは女性の10%、男性の4%です。DVというと女性が男性から受けるもの、というイメージが強くありますが、男性が被害を受けるケースも珍しくはないのです。

いっぽう、同じく内閣府の出している統計(「配偶者暴力相談支援センターの相談件数(令和3年度)」)を見てみると、女性の相談実数が約72,500人、男性は約2,500人と、女性の相談件数が男性の30倍近い数字となっています。

やはり、男女では体格や力にも差があるため女性の被害は深刻化しやすいこと、また女性は妊娠・出産・育児期に行動が制限されるため、その時期にDVが悪化しやすいという背景があるでしょう。また、男性は自身がDVで困っていても「男がDV相談だなんて……」とためらってしまい、声を上げにくいのかもしれません。

老若男女問わず、おかしいと思ったら気軽に相談ができるようになっていけば、と思います。社会全体に、そういう空気をつくっていきたいですね。

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藤井セイラ

編集者、エッセイスト。2児の母。東京大学文学部卒業後、広告・出版を経てフリーに。子育てに関連する勉強が好きで、気がつけば、保育士、学芸員、幼保英検1級、絵本専門士、小学校英語指導者資格、日本語教師、ファイナンシャルプランナー2級など、さまざまな資格を取得。趣味はマンガとボードゲーム。苦手なものはお寿司。最近、映画館で観たのはプリキュア。

X(ツイッター) @cobta https://twitter.com/cobta

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