2024.1.20
【中村憲剛×町田瑠唯対談 前編】バスケとサッカー、稀代の司令塔が「見ている世界」と「見えている世界」
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「ちゃんと見えていたよ」のコミュニケーションも司令塔の重要な役割
中村
あとは、情報収集の観点で言うと、まず自分自身を知らないといけない。小学生のころ、所属していたクラブが試合映像をビデオで撮ってくれていたので、当時の僕は自分のプレーばっかり観ていましたよ。
町田
私も小学生からビデオで観ていました。どちらかと言うと自分よりはチームのほうを。
中村
チームの方を重点的に観る小学生…それもまた凄い。NBAとか憧れの選手のプレービデオみたいなものは?
町田
父がマイケル・ジョーダンのことが大好きだったので、家にあったジョーダンのビデオを暇さえあれば観ていましたね。
中村
ジョーダンはバスケに詳しくない僕でも凄さはわかりました(苦笑)。僕はもうディエゴ・マラドーナ。結局そのビデオテープ、観すぎて擦り切れちゃった(笑)。マラドーナは本当に大好きだったなあ。
町田
ジョーダンは参考にできませんが、高校生のときはNBAのボストン・セルティックスにいた同じPGのラジョン・ロンドをよく観ていました。同じパスファーストの選手だったので、とても勉強になりました。
中村
幼少期から情報に触れて学ぶクセがついているから、今もそうやって情報収集が普通になっているんでしょうね。
町田
はい。たとえばチームバスで移動しているときでも、練習や試合の映像を私は観ます。というか時間さえあれば、暇さえあればバスケの映像を観ているのが、当たり前と言いますか。
中村
その姿勢はみんな見習うべきものだと思います。情報の整理の仕方じゃないですけど、ノートとかにメモしたりはします?
町田
考えたこと、気づいたことは、頭を整理する意味でもノートに書き込みますね。
中村
ここは違いました(笑)。ゴールから逆算して自分が何をすべきかということが、勝手に体系化される感覚が僕にはあって。それはもう小学生のころから。だから脳に書き込むだけでいいかなって。
町田
私の場合はノートに書き込んで整理して徹底的に頭に叩き込みます。相手がオフェンスでこう攻めてきたら、私たちはこう守るとか、すべて完璧にしておかないと気が済まないタイプです。誰かがプレー選択を間違えたら、指示を出す役目でもあるので。
中村
バスケはサインプレー含めて覚えなければいけないこと多いので、PGが全てを把握することはとても大切だと思います。では、プレー中どこを見るかにもう一度話を戻そうと思います。アシストする場面や味方にシュートを打たせるパスを送るときって、どちらを見ますか? ディフェンスする相手のほう? それとも攻撃するチームメイト?
町田
ケースバイケースではありますが、そう聞かれると相手を見るほうが多いかもしれません。オフェンスは“ふんわり見ておく”イメージです。
中村
その感覚、わかります。僕もディフェンスが届かないところに出せば、味方は察知して動いてくれるっていう感覚。ただあくまで割合の話なので、オフェンスを“ふんわり見ておく”という言い方、凄くわかるなあ。
町田
私の思惑どおりに(味方にシュートを打たせる)パスを出せたとき、相手が動いて空いたところにパスを出してゴールが決まったとしても、ほかの味方が相手を振り切ってノーマークになっていたことも認知していたら、その選手に手で「ゴメン」みたいなことはよくあります。
中村
それもわかります。動きを見逃したら味方は今度からはそこに動いてくれなくなってしまう。ゴメンが“ちゃんと見てはいたよ!”というメッセージになるし、その行動一つがチームのクオリティーを上げることに繋がる。技術だけじゃなくそういう細かい配慮も司令塔には大切。これはもうバスケもサッカーも共通して言えることなんじゃないですかね。
後編に続く
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