2022.11.12
【中村憲剛×黒川伊保子対談 後編】もっとも難しい思春期年代の指導にこそ、“思春期脳”の知見を活用すべき
「14歳で得る感性は一生のもの」だと知っておく
黒川
欠点を甘やかすことによって長所を伸ばす。失くし物を許すことで発想力を育てると私は思っています。だから先に動いちゃうタイプの人って、何かを始めるときに道具から揃えたりするんです。それで、そのうちに飽きてしまう。親は「始めるんなら最後までやりなさい」「途中で投げ出しするのはなしだよ」とか言うじゃないですか。それも言う必要はないんです。投げ出しても放っておくと憲剛さんみたいに本気になって戻ってくることがありますから。
中村
確かに。思春期の僕がまさにそれを経験していました。
黒川
投げ出さずにやってきて自分の今の立場をつくるって、大人なら誰しも経験があるじゃないですか。だからこそ、「投げ出してほしくない」と思って、言ってしまう。その親の想いはわからなくはないんです。ただ、子どもはそう言われてしまうと、今度は投げ出せないプレッシャーによって脳が緊張して、センスを100パーセント使えなくなってしまします。
スタートが良くて、勘も良くて、どんどん先へ行けてスピーディーなんだけど、投げ出したり、パニックになる癖があるタイプと、置きっぱなし、やりっ放しでグズグズしているんだけど、不測の事態に強いタイプ。大きく分けてこの2つのタイプだと思っていいと思います。それほど千差万別というわけじゃないんです。後者のタイプは、何かを始める前にぼんやりする時間が必ず必要なんです。ここでもまた、「ぼんやりしちゃダメよ!」と親から言われると、脳が緊張して準備がうまくいかない。だから甘やかすことって大事なんです。
中村
ああ……ぼんやりしてるの𠮟る時あります。自分の子どもたちもそうですけど、サッカーを教える子どもたちが、どっちのタイプかって理解しながら教えることが大事なんですね。ちなみにグズグズのタイプだと、早起きできないことも関係しますか?
黒川
はい。そのタイプは、ぼんやりする時間の間に、脳がすごく準備をしているんです。
中村
なるほど、その時間は妨げてはいけないんですね。最後に黒川さんの本には、「14歳で得る感性は一生のもの」だと書いてありました。まだ間に合いますかね。
黒川
もちろん間に合います。いくらだって間に合います。なぜなら、“14歳の1日というのは、大人になってからの何年間にもあたる時間”だったりしますから。
中村
14歳の1日は大人の何年間に相当するのか……。まだ間に合いますね。よかった。今日は本当にタメになりました。ありがとうございました。
黒川
この出会いをきっかけにまたお会いできればいいですね。もし良かったら、私が金曜パーソナリティーを務めるNHKラジオ「らじるラボ」にもゲストでいらしてください。
中村
ぜひぜひ、お願いいたします!
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【ケンゴの一筆御礼】
妻から勧められて、なにげなく読んでみた『思春期のトリセツ』。14歳の長男や、育成年代にある子どもたちと接するにあたって、どのようにすればいいんだろうと思っていたところに、「子ども脳から大人脳への移行期でハードウェアとソフトウェアが合わないから誤作動が生じる」思春期脳のことなどを知り、疑問に思っていたことに対して納得ができました。自分の教育の考え方や指導の考え方が違うのかなとも感じていたので、かなり救われました。思春期の子どもを持つ親世代もそうですが、サッカーをはじめスポーツの指導者のみなさんにも知ってほしい知識だと思います。脳のことを知ると、教育も指導ももっとよりよくなると感じました。
最後に、今回の対談には“黒川ファン”の妻もタイミングが合い同席させていただきました。対談後には妻の話も聞いていただき、感謝の言葉しかありません。またぜひお会いして、いろいろと教えていただければありがたいです。黒川さん、ありがとうございました!!
この連載は不定期連載です。次回はどんなゲストが登場するか? お楽しみに!
(取材時は感染対策を徹底し、撮影時のみマスクを外しています)
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