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【中村憲剛×黒川伊保子対談 後編】もっとも難しい思春期年代の指導にこそ、“思春期脳”の知見を活用すべき

「家族を甘えられる場所にしたら、外では戦えるだろう」という教育方針

黒川
たしか息子さんはタオルの置きっぱなしとか、この「ぱなし」があるタイプなんですよね?

中村
基本、置きっぱなしです(笑)。

黒川
そういうタイプのうほうが、むしろ不測の事態に強いんですよ。逆に、いろいろ気がついて、動ける子のほうが投げ出しやすい。

中村 
僕、まさに先に動いちゃうタイプです。確かに思春期にある中1のときに一度自分に絶望してサッカーを辞めたことがあるんです。

黒川 
段取り上手でスピーディーに物事の本質を見抜くのが早い分、あきらめも早い。でも憲剛さんは結局、サッカーを辞めなかったということでしょ?

中村 
はい。当時は身長が小さくて、それが嫌で。でも、小さくてもどうやってプレーすればいいかという思考に変換して、辞めた期間でサッカーに対する愛情を再確認できました。半年間くらいサッカーをしてなかったんですけど、その時期があったから、40歳までプロでサッカーを続けられるベースができたんじゃないのかなって思います。

黒川
憲剛さんと息子さんはまたちょっと違うタイプなのかもしれませんね。温かく見守ってあげてください(笑)。

中村 
心に刻みます。ちなみに、黒川さんの息子さんは「ぱなし」があったんですか?

黒川 
もちろん! よく、どこかに「置きっぱなし」なタイプでもあります。ミステリー本の下巻をなくしちゃったとか。そういうときはネットでポチっと買っちゃいます。

中村 
えっ! 買っちゃうんですか!

黒川 
はい。我が家にはCDとか本とか失くすと、もう1回買ってもいいっていうルールがあるんです。たとえば、ザ・クロマニヨンズのCDを失くしたときも、「甲本ヒロトに著作権料が入るからいいや」と思って1枚買っちゃう(笑)。まあ、甘やかしルールですよね。というのも、「家族を甘えられる場所にしたら、外では戦えるだろう」というのが私の教育方針だったんです

中村
名言いただきました!(笑)

黒川  
もちろん、家で厳しく育てられても外で戦えるタイプっているんですけど、でも脳の働きから言えば、どこかで自分を肯定してくれる、欠点まで認めてくれるというものがあるほうが、外で戦えます。

中村 
だから僕も『思春期のトリセツ』を読んだ今は、あまり言わなくなりました。

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新刊紹介

中村憲剛

なかむら・けんご●1980年10月31日生まれ、東京都出身。中央大学卒。
2003年、川崎フロンターレに入団。20年の引退まで同チーム一筋のレジェンド。Jリーグベストイレブン8回。16年にはMVPも受賞。日本代表国際Aマッチ68試合出場6得点。10年南アフリカW杯、出場。最新刊『ラストパス』は現在4刷で話題。
公式ブログ■中村憲剛オフィシャルブログ
公式X@kengo19801031
公式インスタグラムkengo19801031

黒川伊保子

1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学科卒業後、富士通でAI開発にかかわり、脳と言葉の研究を始める。日本語対話型コンピュータや、語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し。マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。ベストセラーになった『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』『娘のトリセツ』『息子のトリセツ』など著書多数。
公式HP■黒川伊保子オフィシャルサイト

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