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【中村憲剛×横田真人対談 後編】 人を見て選択肢をどれだけ与えられるか? 理想とするコーチング論 

「選択肢を与えるのが指導者」という考え方

中村  
横田さんとの対談にあたってインタビュー記事も結構読んできました。そして今日、話をここまで聞いて思うのは、横田さんは「選手に選択肢を与えるのが指導者」という考え方なんじゃないかって。合ってます?

横田 
ズバリ、合ってます。

中村 
僕も子供たちを指導するときに、僕が思ったことを決めつけて言ってしまうのは危険だなと思っていて。たとえばその子が右を見てパスを出したなら、「左という選択肢もあったよ」とわかるようにして教えてあげるのが僕の考える指導者かな、と。現役のときも後輩たちを教えながら感じたことでもありました。
でも、これがサッカーの監督になると別。どこかで自分の考えを押しつけなきゃいけない瞬間も絶対に出てくるので。僕は今その立場にはないから、人を教えるという観点においては横田さんと(考え方が)似ているんじゃないかと思ったんです。

横田 
人それぞれに合わせるっていうことですよね。ちなみに中村さんはパスにおいても相手に合わせて出すんですか?

中村  
はい。全員にパスを変えていましたよ。足が速い選手もいれば遅い選手もいるし、動き出すクセもそれぞれ違いますからね。

横田 
すごい!

中村 
でもそれは特別でも何でもなくて、小さいときからそういう状況に慣れていたので。横田さんはどうして、選択肢を与える、人に合わせる指導法という考えに至ったんですか?

横田 
現役時代、型にはめられるのがダメで。「こうしたほうがいい」と言ってくる指導者は多いんですけど、気持ち的には「いやいや、一体僕の何を知っているんですか」と。僕、結構、嫌なヤツでして(笑)。

中村  
それは指導者からすると嫌なヤツですね(苦笑)。でもそれも事実ですよね。

横田 
だから基本的には指導者を置かずに、一人でやっていたんですね。2年間ほどアメリカ(サンタモニカトラッククラブ)にいたときだけはコーチに教わっていましたけど、そのときも「あなたに僕の何がわかるんだ」と思いながらやっていて、結果も出なかった。
だから僕はコーチになっても、最終的な選択権は選手にあるという考え方。責任は一緒に取るけど、「どう選択するかは、君が決めてください」と。

中村  
選択を与えることで選手も考えますからね。

横田 
今、息子が2歳なんですけど、子育ても一緒かなって。保育園に行きたがらないときがあったりするじゃないですか。でも「じゃあ抱っこで行く? それともベビーカーで行く?」と聞いてみると、「抱っこで行く」と言うんです。ああ、行く気はあるんだなって。自分が決めることで責任も生まれる。これ、選手を教えるのと同じじゃないかって。

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中村憲剛

なかむら・けんご●1980年10月31日生まれ、東京都出身。中央大学卒。
2003年、川崎フロンターレに入団。20年の引退まで同チーム一筋のレジェンド。Jリーグベストイレブン8回。16年にはMVPも受賞。日本代表国際Aマッチ68試合出場6得点。10年南アフリカW杯、出場。最新刊『ラストパス』は現在4刷で話題。
公式ブログ■中村憲剛オフィシャルブログ
公式X@kengo19801031
公式インスタグラムkengo19801031

横田真人

よこた・まさと●1987年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒。
富士通を経て、現在はTWOLAPS TRACK CLUB代表として活躍。陸上男子800メートル元日本記録保持者。日本選手権6回優勝。2012年ロンドン五輪で日本人44年ぶりに800メートル出場。同年渡米しサンタモニカトラッククラブで2年間の競技生活を送る傍ら、米国公認会計士試験に合格。16年、現役を引退。

公式ツイッター@MASATO_800
公式HP■TWOLAPS

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