2021.11.20
【中村憲剛×廣瀬俊朗対談 後編】サッカー、ラグビー、バスケ…競技の枠を取り払って一緒にやることも大切な時代に
「競技の枠を取っ払って」やることも大切な時代
中村
スポーツのイベントをやるにしても今まではラグビー、サッカーと競技ごとに独立した形でしたけど、たとえば川崎フロンターレで言うと、Bリーグの川崎ブレイブサンダース、VリーグのNECレッドロケッツ、Xリーグの富士通フロンティアーズなどとの交流もそうですし、川崎にあるスポーツ団体の横のつながりでいろいろと活動をしています。だから競技は関係なく、みんなで一緒になってやっていけばいいんじゃんっていう感覚がある。それはフロンターレが気づかせてくれたこと。スポーツ界全体でスクラム組んでやれば何でもできそうだなって。
廣瀬
Jリーグ自体、「100年構想」があって地域に根差してやってきている。たとえばBリーグなども地域に目を向けていると感じています。その意味においてラグビーは他競技に比べると、遅れている感は否めない。来年1月に新リーグの「リーグワン」が開幕しますし、ラグビー界も変わろうとはしています。JリーグやBリーグ、それにNPBもそうですが、いろんな競技団体からノウハウをいただきながら一緒にやっていければと思うんですよね。
中村
その地域性のところで言うと「リーグワン」はこれまでのトップリーグと変わる点があるのですか?
廣瀬
ホスト&ビジター制、つまりJリーグで言うところのホーム&アウェーになります。これまでホストスタジアムがなかったので、そこは大きな違いかなと。
中村
なるほど。そうなると確かに地域性は強くなってきますよね。
廣瀬
ただディビジョン1に「東京」がつくチームが5チームあって、地域差が出てしまっている。Jリーグはどの地域にも基本的にはクラブがあるじゃないですか。
中村
Jリーグは全国に57クラブあります。それだけ地域の子どもたちに夢や目標を与えられているんじゃないかなとも感じますね。とはいえ、Jリーグが始まって30年経ちますから、新しいフェーズに入ったのも確か。少子化やデジタル化を含めて時代が変わってきているので、変えていくべきところは変えていかないといけないでしょう。廣瀬さんは「B.LEAGUE応援キャプテン」を務めていましたけど、バスケットもいろいろと変わろうとしているんですよね。
廣瀬
そうです。2026年から新しい仕組みになって(勝敗による)昇降格制がなくなります。新B1昇格には、5000人規模のアリーナを持つこと、などいろいろと条件がつきます。指針がしっかりとあるので各クラブもそこを目指そうとやっている印象ですね。チェアマンが先頭に立って(改革案を)示していくリーダーシップの形は個人的にはいいなあ、と。元々Bリーグは2つのリーグを解消して、新しく1つを作る改革が必要というスタンスから始まっているところもあります。ラグビーはどちらかと言うと、みんなで話し合いをしながら進んでいくのでスタイルなのでなかなか進まない(笑)。いつも最終的には何とかなるんですけどね。
中村
やっぱり僕たちより上の世代の方たちの中には、サッカーはサッカーでとか、ラグビーはラグビーでというような競技の枠を意識しているところは少なからずあると思うんですよ。でもその枠を取っ払ってやり始めたら「これ結構やれるじゃん」ってなるんじゃないかなとフロンターレで多くの方たちと色々なことをしていく中で感じたんです。コロナ禍で最初の緊急事態宣言で、全てのスポーツが止まってしまった時に、スポーツの存在価値について考えさせられたこともありました。
だけど、スポーツが戻ってきて、週末にそれぞれがプレーしたり、みんなで応援しているところを見て、やっぱりスポーツは日常に彩りを与えてくれるものなんだなって強く感じました。だからこそスポーツの良さ、価値をどう広めていくかをもっと真剣に考えなくちゃいけない時期に来ているのかもしれない。
廣瀬
同感です。