よみタイ

カフェイン抜きと雑草とのにらみ合い

 私はカフェインが体から排出されるのが遅い体質らしいので、なるべくカフェインはらないようにしている。お茶のたぐいもカフェインの含有量が少ないものや、カフェインレスを選んでいた。ダークチョコレートは、甘くはないにしても、カフェインは含まれているわけで、これを毎日口にしていたせいではないかと、食べるのをやめた。ついでに血圧に関係するらしい、甘い物を食べるのもやめた。そして体からカフェインを排出するために、動悸が収まるまで白湯さゆだけを飲むことにした。ダークチョコレートはともかく、好きな緑番茶が飲めなくなったのは辛かったけれども、とにかく直そうと続けていたら、四、五日で収まった。以降、ダークチョコレートと甘い物は厳禁にして、好きな緑番茶は少量、主に白湯を飲むのを続けていた最中に、先生にそういわれたのである。
 その話を先生にしたら、
「ダークチョコレートは普通のチョコレートより栄養価が高いといっても、脂の塊なのには、変わりはないから。もちろんカフェインも含まれているし。たまにならいいけれど、少しずつであっても、毎日食べ続けるようなものじゃないですよね」
 といわれた。外国人の体質には合うかもしれないが、体型からして典型的日本人の私には、向かなかったのだろう。
 しかし先生は、
「甘い物とカフェインを抜くと、こんなふうに体が違ってくるのね」
 と感心していて、私の体内はよい方に変わっていたらしい。ただ自分の感覚として、
「体調、最高!」
 と実感できていないのが残念だった。実際、自分では体調がいいと思っていても、先生は、
「うーん」
 と首を傾げていることがあった。だいたいそういうときは、体が疲れているのに、私自身が疲れを感じていないときだった。
 先生からは、
「疲れを感じてから休むというのでは、すでに遅いので、疲れる前に休むようにしてください」
 とよくいわれていた。漢方薬局に通い続けるようになって十四年が経ち、最初の頃は、それがうまくできなかったが、最近は年齢もあるので、すべて早め、早めに対処するようになった。起きる時間はいつも決まっているので、寝る時間が一時間遅れると、目覚めがいまひとつよくない。できる限り同じ時間に寝るようにしている。
 食事の時間はだいたい三食、決まっているし、フリーランスのわりには、判で押したような生活をしている。ネコと一緒に暮らしていたときは、何でもネコ様に合わせていたので、私の自由にはできなかった。夜、ネコ様の命令で、九時半頃に、
「寝なさい」
 とむりやりベッドに入れられたのはいいが、それから二時間おきに起こされて、ネコ様の、「でて」「ブラッシングして」「何でもいいから褒めて」といった要望に対し、乳母の私には拒否権などなく、命じられる通りにしていた。その習慣が長くあったので、起こされなくても二時間ごとに目が覚めるようになってしまった。しかしネコ様を見送ってからは、そんなこともなくなり、寝る時間が一時間遅くなると、翌日、睡眠不足気味になるけれど、朝、起きたとたんに、すでに疲れているといったことはなくなった。無理は禁物だと思ってはいるが、気分はまだ三十五歳くらいのつもりでいたりするので、
「それは、いかん。実年齢を認めよう」
 と自分を戒めている。

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新刊紹介

群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』『今日はいい天気ですね。れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』『たべる生活』『これで暮らす』『小福ときどき災難』『今日は、これをしました』『スマホになじんでおりません』『たりる生活』『老いとお金』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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