2025.1.14
家族とはどんな存在ですか? 第5便 「家族」を書く理由
クォンさんから村井さんへ
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理子さんへ
お便り、ありがとうございます!
理子さんからのお便りが少し遅れていたので、何かとお忙しくされているのだろうと感じていました。実は私も翻訳した本の校正が何冊分も一度に届き、慌ただしい十二月を過ごしていました。こうしてお互いに頑張っていると思うと、心強いです。
お便りを読んでいると、琵琶湖の周辺の風景が目に浮かびます。寒い朝にテオを散歩させている理子さん、大変な思いをされていることでしょう。でも、都会に住む私にとっては、琵琶湖での生活がうらやましい限りです。一日中机に向かって仕事をする職業では、テオのおかげで体を動かす機会があるというのは、とてもありがたいことですね。玄関先にさえほとんど出ない私はこのままだと机に向かうお化けになってしまいそうです(泣)。
理子さんの「家族とはどんな存在ですか?」という質問に、話したいことがたくさん浮かんできました。正直なところ、私はどうしても家族にポジティブなイメージを抱くことができません。実は、一年前に母の葬儀を終えた後、実家の家族と距離を置くことになり、それから一度も連絡を取ることはありませんでした。それでも、血のつながりがあるせいでしょうか、時々ふと元気にしているのだろうかと気にかかることがあります。家族と縁を切った理由については、また機会があればお話しさせていただきますね。
両親は私が二十代半ばまで銭湯を営んでいました。一見すると裕福そうに見える環境でしたが、実際の生活は常に厳しいものでした。それは、両親が子どもたちの教育よりもお金を稼ぐことを大切にしていたからです。私は五人きょうだいの末っ子ですが、幼い頃、こんな妄想をよくしていました。ドラマのように突然、本当の親が現れて、「実は私たちが君の親なんだ」と言ってくれたらどんなにいいだろう、と。もちろん、大人になってからはそんなことを考えなくなりました。以前もお話ししましたが、私は親孝行DNAを持つ娘で、喜んで両親の晩年をしっかり支えましたよ。
二人とも亡くなった今、振り返ると、両親は日本の植民地時代に貧しい農家に生まれ、学校教育を受けられなかったために無知だっただけで、そして、その貧しさから抜け出すためにお金を稼ぐことに必死だっただけで、悪い親ではなかったのだと感じます。少なくとも、私たちを飢えさせることもなく(机は買ってくれませんでしたが)、暴力を振るうこともなく(関心もありませんでしたが)、大学まで行かせてくれました(そこまででしたが……)。私にとっては普通の親だったと思います。ただ、きょうだいたちにとってはまた違ったかもしれません。
母は晩年に認知症を患いましたが、亡くなる数日前にこんなことを呟きました。
「あまりに貧しく、食べていくのに精一杯で、あんたたちに構ってやれなかった。許してください。ごめんなさい」
その言葉は私に向けられたものではなく、虚空に向かって誰かに話しているものでした。おそらく、縁を切り、姿を見せなくなった姉たちに向けた言葉だったのでしょう。
理子さんのお母様のお話を聞いて、随分と昔のことなのに胸が痛みます。それは、理子さんのお気持ちも、お母様のお気持ちも、どちらも理解できるからでしょうか。そして、娘の靜河が小学生だった頃に交わした会話を思い出しました。娘と一緒にテレビを見ていて、主人公が再婚するシーンが流れたとき、娘が「ママ、再婚したら通報するからね!」と言いました。それに私は、「じゃあ、靜河が勉強ができなかったらママ、再婚するからね」と笑って返したのを覚えています。
母と二人で暮らしていて、もし母に彼氏ができたら、幼い娘にとってはまるで世界が崩れるように感じるでしょうね。幸いなのか、それとも残念なのか、私には再婚どころか恋愛のチャンスすらありませんでしたが。
もうすぐ三十歳になる娘は、もしかしたら「母に彼氏ができたらいいのに」なんて思っているかもしれません。母の老後を一人で支えるのはきっと大変ですから(笑)。
この〝親孝行なのであまり幸せではない娘″は、「ママ、お正月の初日の出を見に行こう!」と言って、韓国で日の出スポットとして有名な江原道の正東津にあるサンクルーズホテルを予約してくれました。隠せない親孝行のDNAです。
理子さん、二〇二四年は本当に特別な一年だったのではないでしょうか。ハリーが虹の橋を渡るという、とても悲しい出来事もありましたが、お仕事の面では素晴らしい成果を残されましたね。理子さんの活躍に、ただただ感心し、勇気をもらっています。
私にとって二〇二四年の一番のビッグニュースは、『よみタイ』で往復書簡を連載させていただけたことです。これは間違いなく、理子さんとのご縁があったからです。そしてさらに遡れば、ハリーのおかげでもあります。本当にありがとう、ハリー。
新年あけましておめでとうございます!
二〇二五年はさらに輝かしい一年になりますように。そしてこれからも、お互いの思いや日々をメールに綴りながら、訳して、書いて、楽しみつつ、素敵な文通を続けていきましょうね。
ナミ
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*次回は2月11日(火)公開予定です。
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