よみタイ

髙橋義明 「建築」の視点を持ちながら、これからもアートと向き合っていく  【実録・メンズノンノモデル 第8回 後編】

記事が続きます

アトリエの“借り主”という肩書が、今は気に入っている

 現在も、ここ「東葛西1-11-6 A倉庫」で、引き続き同級生とともに様々なアーティストとの企画展を開催しながら、建築設計や会場構成も手がける髙橋。まさに今の彼の活動こそ、メンズノンノモデル時代に見出した、「人と人、言葉と言葉を繋ぐことも建築」という思考を体現しているのではないだろうか。

髙橋 都心のギャラリーはスペースが狭いところが多くて、かたや美術館となると逆に規模が大きすぎる。ここは、その中間的な立ち位置としてサイズ的にもちょうどいいから、いろいろなアーティストが興味を持ってくれる。今後は、こういった、アーティストたちが心おきなく創作を続けられて、かつ展示もできる場所をもっと増やしていきたいなと思っているんです。たとえ僕が直接関われない場合でも、その環境を整えていくことに繋がるのであれば手助けをしていきたいと考えています。日本は、ヨーロッパなどと比べると、アートを身近に鑑賞できる環境がまだまだ少ない。今はまだ微力ですけど、自分なりにそこを整えていきたいという気持ちが強いです。

 いつかまた自ら作品を作り、世の中に向けて発表する。きっとそんなビジョンも描いているだろうと思い、訊ねてみたところ、意外な答えが返ってきた。

髙橋  絵を描いたり、家具を作ったりというのは(今後も)あると思いますけど、今の心境としては、あくまで自分の創作は“趣味”でいいのかなって(笑)。それより、この「東葛西1-11-6 A倉庫」を起点に、誰かの手助けになるような活動をしていけたらうれしいなと思うんです。だから最近はあえて、ここの「借り主」と名乗っています。ただ事実しか表していない、誰でもなれるものではありますけど、その感じがやけにしっくりきているんです。

 そして、36歳となった今もモデルの仕事を続けている。メンズノンノモデル卒業直後から起用され続けている雑誌UOMOの他、〈ビズビム〉をはじめ様々なブランドのカタログや広告ビジュアルにも出演するなど変わらず被写体としての人気が高い。

髙橋  僕はインスタグラムのアカウントも作っておらず、いわゆる“数字”を持っていない人間ですし、こんな見た目に構わない格好もしているのに声をかけてくださる方々がいるのは、本当にありがたいことです。だから呼んでいただけるうちは、期待に応えられるように頑張って続けたいと思っています。以前、撮影のロケバスの集合場所でスタッフと間違えられて、「モデルさんはもうロケバスに乗っていますか?」と聞かれたこともあったんですよ(笑)。

 もうすぐやってくる40代に向けて、こんな思いも抱いている。

髙橋  20代から30代になるときには、もっといろいろと勉強して世の中を知っていかないといけないなと思いましたが、いざこうして年齢を重ねてみると、知っていくどころか、さらにわからないことだらけ(笑)。……それはそうだよね、と。むしろその感じが楽しくなってきているようなところもあるので、これからも「何かをやらなければ」というよりは、程よく流れに身を委ね、自分に嘘をつかない形で建築やアートと関わっていきたいと思っています。

 終始、メンズノンノモデル時代と変わらない、穏やかな語り口でインタビューに応えてくれた髙橋に、最後に率直な疑問をぶつけてみた。かつて大学卒業後、建築業界への就職は本当に考えていなかったのだろうか。

髙橋  はい、それはなかったですね。というのも、メンズノンノモデルのオーディションが僕にとっての“就活”でしたので。当時は「建築と社会をうまくリンクさせてみたい」という、漠然とした思いだけで、具体的なビジョンや方法があったわけではないのですが、こっち側に来れば人生が面白い方向に転んでいくんじゃないかなって(笑)。そして実際、その通りになっていると思うんです。

PROFILE
1989年生まれ、愛知県出身。2011年、武蔵野美術大学建築学科3年時に第26回メンズノンノモデルオーディションでグランプリに輝く。以降、2019年6月まで約8年間メンズノンノモデルとして活躍。その間、モデル業と並行しながら、大学卒業後には建築士資格を取得し、アーティストとして作品の展示やインスタレーションにも精力的に取り組む。また大学同期のメンバーたちとともに江戸川区の元床柱工場をアトリエとして改装し、現在は「東葛西1-11-6 A倉庫」という名で公開している。そこを拠点に様々なアーティストと共同で企画する展示を開催しながら、建築設計や会場構成なども手がけている。BE NATURAL所属。

記事が続きます

次回、連載第9回は8/7(金)公開予定です

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

関連記事

新刊紹介

徳原海

大阪府出身。メンズノンノ編集部でのアルバイト勤務を経て2006年からフリーランスの編集者として活動。メンズノンノ、UOMOなどの雑誌をはじめ、現在は様々なファッションブランドやスポーツブランドの広告ビジュアル制作なども手がける。著書に「パラアスリート谷真海 切り拓くチカラ」(集英社)、写真と文で綴った欧州フットボール紀行「the Other Side」(ブートレグ出版)など。

Instagram :@kai.tokuhara

週間ランキング 今読まれているホットな記事