よみタイ

群ようこ「今日は、これをしました」
物を減らす、無駄なことはしない、必要以上に買わない。
「しない。」生活のなかだからこそ、手に入れるもの、するべきことは
試行錯誤を繰り返し、日々吟味している群ようこ氏。
そんな著者の「しました、食べました、読みました、聴きました、着ました」
など、日常で「したこと」をめぐるエッセイ。
自宅でできるあんなこと、こんなことのヒントがいっぱいです!


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掃除道具を買い替える

今日は、これをしました 第5回

 先日、マスク入れを買ったので、その流れでマスク専用のトタン製豆バケツを買った。直径十八センチ、高さ十センチで、昔、囲炉裏いろりにぶら下げられていた、持ち手が一本の鍋のような形状である。価格は千二百円+税だった。外出から帰ってくると、拙い自作や購入した、不織布ではない天然素材のマスクを、この鍋のなかに入れて湯を注ぐ。それから手洗い、うがいをし、着替えをした後、石けんでマスクを洗って干す。干すのは以前から持っている、無印良品のアルミ直線ハンガー6ピンチ、税込四百九十円である。バケツが小さいので、洗面台の洗面ボウルの中に置いておいても邪魔にならない。マスクのように小さなものは、いちいち大きな器や干し器を出すのは面倒くさいので、こういった小ぶりなものがあると使い勝手がいい。
 入浴後に浴室内の水分を拭き取るタオルも、湿ったまま洗濯機に入れるのをためらうのだけれど、このバケツに入れておくと、翌朝の洗濯までの一時置き場になり、便利に使っている。百均でもプラスチックのものを売っているかもしれないが、形も素材もかわいらしく、長く使える点を考えてトタン製にした。
 うちはネコがいるので、朝、起きたらフローリングの床をワイパーで掃除するのが日課になっている。不織布のシートを本体にはさんで使う一般的なものだが、ワイパーもシートもプラスチックなのが、ずっと気になっていた。それと合わせて必ず使うのが、抜けた毛を取るロール式のゴミ取り、いわゆるコロコロである。すぐに掃除ができるように、コロコロはテーブルの上に置いてあるのだが、これも長い間、セットになるように作られたプラスチックのケースに入れて使い続けていて、薄汚れた感じになっているのが気になっていた。そしてやっと、フローリングワイパーの本体の汚損が激しくなり、両方とも買い替えた。
 フローリングワイパーもコロコロケースも、日常生活で必要なものだけれど、これまで置き場に困っていた。いかにも、な掃除用具なので、目につく場所に置きたくないし、かといって目につかない場所に置くと、もともと掃除嫌いな私は、取りに行くのが面倒くさくなって、
「ま、いいか」
 と掃除するのをやめてしまう。衛生上、それではいけないと、こまめに掃除はしなくてはいけないのだが、どうも不精のほうが勝ってしまうので、よろしくない。物には罪はないし、ずっと使っていたコロコロケースも、自立式のそれなりに考えられたデザインで、悪いわけではないのだが、ソファの前のローテーブルに置いていると、
(何とかならないかな)
 と気になっていた。年を経るうちに劣化するのはやむをえず、私も歳を重ねるにつれてそういった部分がとても気になるようになった。もったいないので限界までは使うつもりだったけれど、同じものを買い替えるかと聞かれたら、そうはしたくなかった。
 フローリングワイパーのほうは、狭いキッチンの内開きのドアの陰に、ゴミ箱と一緒に隠していた。ここだったら誰かがキッチンに入っても、開けたドアで視線が遮られる死角だからだ。しかし掃除のたびに狭いキッチンのドアを開けて、フローリングワイパーを何度も取り出すのが面倒くさい。もう何でもある世の中なのだから、外に出しておいても大丈夫なデザインのワイパーがあるはずと考えていたが、やはり同じことを考える人がいたようで、調べてみたら様々なデザインのものが発売されていた。
 何か月かに一度、勝手に送られてくる通販雑誌で、木製のワイパーがあるのを見たことがあった。買い替えるのなら出しておいてもみっともなくない、木製のものがいいと考えていた。しかしポール部分が金属で、本体は木製でも床に接する部分がゴム製なので処分するときに面倒だし、本体も大きめで前期高齢者の私が使うにはやや重そうだった。できれば、全体が木製のほうがいいと探していたら、床に接触する部分と、ポールが接合する部分のみ、小さな金具がついているものをみつけた。
 シートを本体にはさみ込むのではなく、上部が二つの長方形の板に分かれている。本体の上部とその板の下部に磁石が埋め込まれていて、それでシートを固定するようになっている。市販のシートだけではなく、磁石がくっつけば布地もはさめる。私はシートを指先で隙間にむにゅっとはさみ込む感覚が好きではなかったので、磁石で固定する方法があったのかと感心した。素材は吉野よしのひのきで、外見は無垢のシンプルな棒に床に接する長方形の本体がついているだけである。これはいいなと思いながら、他の掃除関係の道具を見ていたら、ナラ材のコロコロケースもあった。
 こんなものまでと早速、詳細を見てみると、大きさは縦八・五センチ、横二十二センチ、高さ十センチのナラ材の箱である。箱の上部にスリットがあり、箱の一方が開いていて、そこからロール紙をセットしたハンドルを差し込むようになっている。ハンドルは金属製で、細い革ベルトが巻いてある。置いておくと四角い木製の箱から、金属製のハンドルが出ているだけで、これだったら室内のどこに置いていても、掃除用具っぽくないと、どちらも購入した。両方とも中川政七商店のものだった。
 これまで使っていたコロコロケースは、ハンドルにプラスチックのローラーがついていて、そこにスライドさせてロール紙をはめ込む方式だったが、こちらは替えるときには、ハンドルにはめてある革ベルトを外すと、ハンドルの両側が広がるので、そこにロール紙をかませる仕組みになっている。ロール紙をハンドルにセットするときには、中央に穴が開いた小さな木の蓋のようなものを、ロール紙の両側にはめ、その穴にハンドルの先を差し込む。そしてハンドルにベルトをはめると、固定されるデザインになっている。木、金属、革で作られていて、プラスチックは使われていない。以前、使っていたものに比べると、交換の手順は多くなるけれど、目につく場所に置いていたときの雰囲気が断然違うのだった。
 ティッシュボックスも、そのまま部屋に置くのはいやで、カバーをかけて使っている人がいる。私もお仕着せの柄のものはいやなので、なるべく白の箱のものを選んで買っているのだが、まだカバーをかけるまでには至っていない。かぎ針編みでケースを編んでいるのを見かけたことがあり、いつか作りたいなとは思っているが、まだ実現していない。
 ボックスを目立たないところに設置するために、メーカーがマグネットを送ってくれると知って、切手を同封して送ってもらったこともあった。ボックスの底に板状のマグネットを差し込み、たとえばテーブルの下側などにもう一枚マグネットを貼って固定するという方法だったが、使うたびにテーブルの下に手を伸ばして取り出すのが面倒くさくなり、結局は場所を固定するよりも、あちらこちらに持っていけたほうが私には便利だとわかり、箱のままで使っている。日常的に使うものは、個人の好みがよく出るものだと思う。

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群ようこ

むれ・ようこ●1954年東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセイ『午前零時の玄米パン』で作家としてデビューし、同年に専業作家となる。小説に『無印結婚物語』などの<無印>シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』などの<れんげ荘>シリーズ、『今日もお疲れさま パンとスープとネコ日和』などの<パンとスープとネコ日和>シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『還暦着物日記』『この先には、何がある?』『じじばばのるつぼ』『きものが着たい』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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