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アン・ハサウェイが演じ分けた「働く女性像」――『マイ・インターン』から学ぶ、弱点を晒して信頼関係を築く方法

弱さを認めて自分を変える

 とはいえ、ベンの有能さはジュールズも認めている。深夜のオフィスでベンと二人きりになったときには、ピザを持って自らベンのもとへと赴き、その場で軽食をともにしようとする。その際、ベンがFacebookのアカウントを作成するのを手助けする。プロフィールの項目を埋めるためにジュールズがベンの好きな音楽や小説を尋ねる過程で、二人はお互いの趣味嗜好に共通点があることを確認しあう。さらには、このオフィスの前身こそがベンのかつての勤務先だったことが明かされる。お互いの私的な事情を共有した二人は親密さの度合いを深めていく【図6】。

【図6】
【図6】

 こうしてベンのことを信頼し始めていたジュールズだったが、多忙なあまりに「彼を異動させてほしい」という以前の指示を撤回し忘れてしまう。彼女は即座にベンの異動先へと赴き、偏見を持っていたことを素直に告白して衷心から謝罪する。ベンはその謝罪を受け入れ、昇格したうえでジュールズのサポートを行うことになる。この些細な行き違いを通してお互いの本音を確かめあった二人の信頼関係は、結果としてさらに強固なものとなったのである。

 二人の関係性は、ジュールズの振る舞いにも変化を及ぼしていく。プライベートを隠すようにしていたジュールズは、風邪を引いてしまった夫に代わってベンに娘の送迎役を任せるまでになる。また、母親に悪口のメールを誤送信した際にはそのことを職場で打ち明け、助けを求めている(ベンを中心とするチームが見事にミッションをやり遂げる)。さらに、CEO候補との面談のためにベンとともにサンフランシスコに出張した際には、宿泊先のホテルで夫が浮気していることを打ち明ける(そのことにはベンも気づいていた)。もしも離婚して一人で墓に入ることになった場合を想定して怖がって泣き出したジュールズに対して、ベンは自分と亡妻の墓に入ればいいと言って慰めるのである【図7】。

【図7】
【図7】
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伊藤弘了

いとう・ひろのり 映画研究者=批評家。熊本大学大学院人文社会科学研究部准教授。1988年、愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。京都大大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。著書に『仕事と人生に効く教養としての映画』(PHP研究所)がある。

Twitter @hitoh21

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