2023.4.7
「好く力」の強弱は幸福度に比例するか 第10回 「推し」持ちと推せない女との深い溝

第10回 「推し」持ちと推せない女との深い溝
若者や子供達に対して、
「何かメッセージをお願いします」
などと言われることがたまにあります。未来ある若い人々に、生きる上で役立つアドバイスを、ということなのですが、「生きる上で役立つアドバイスがあれば、自分が知りたいものだ」と思い続けている私としては、そんな時にいつも困り果てるのでした。
困った末に私が言いがちなのが、
「何か一つ、大好きなものを見つけるといいですね」
ということ。大好きなものがあれば、おのずと進路も決めやすい。それが将来、仕事になるとは限らないものの、大好きな何かが存在することによって、人生には張りが出るのですよ、と。
しかしそう言われた若者達は、「あーまたそれ」という顔をしています。今、「好きなものを見つけろ」というのは、おそらく大人達が最もよく口にしがちなアドバイス。
「夢中になれるものを探せ」
「『好き』を力に」
などと、若者は何かというと「とにかく何かを好きになれ」とけしかけられ続けているので、すでに耳にタコ、という状態なのではないか。
昨今は、「好く力」とでも言うべき能力が、非常に重要視されている時代です。何かを好きになる力の多寡によって、人生は面白くもつまらなくもなる。また、「好く力」を持つことによって、人生はグッと楽にもなるようだ、と大人達は実感しているのであって、だからこそ我々は若者達に、「好きになれるものを見つけろ」と言いがちなのです。
子供の頃から大好きな道が定まっていれば、その道をひたすら進むことによって、人生は切り拓かれていくものです。進路にしても、好きなことがある人は、あまり悩まずに済む。絵を描くことに夢中なのであれば、美大を目指すことになりましょう。料理が大好きで料理人になりたいのなら、特に大学に行かなくてもよいのです。